コロナ後の経済はデフレでなくインフレになる

ソシエテ・ジェネラル証券の会田氏に聞く

――米国はどのような状況ですか。

米国はこれまで日欧とは異なった状況だった。

企業セクターの貯蓄率はリーマンショック後に一時的にプラスになったが、その後すぐマイナス(借入超過)に戻った。一般政府収支の赤字も続いており、企業と政府の資金需要は十分にある。こうした資金需要とセットだったため、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融緩和政策もある程度の効果があった。

問題は、リーマンショック前に負債を増やしていた家計セクターがデレバレッジ(借入返済)に転じ、家計の貯蓄率が上昇したことだ。そのことが企業と政府の資金需要を相殺してしまい、国内3セクター全体では資金需要は弱かった。実体経済のお金の回り方が弱くなったため、リーマンショック後の米国の国際経常赤字は縮小し、絶対水準でリーマン前の半分程度になった。それだけ、国外への総需要の供給が減ったということだ。


ドルは文字どおり世界の基軸通貨であり、米国が経常赤字を出すことによって世界にドルが供給される側面がある。経常赤字が半分になり、その分ドルの供給も減って、グローバルデフレにつながった。

米国は総需要とドルの供給を世界へ拡大

――コロナ危機により、2020年の米国の財政赤字は対GDP比で約25%と第2次世界大戦時並みに悪化する見通しです。

企業セクターはコロナ危機で一時的に貯蓄率がプラスになっても、ずっと続くわけではないだろう。リーマン後のバランスシート修復を完了した家計も貯蓄率を急上昇させないとすれば、財政赤字拡大は資金需要の復活にダイレクトに結びつく。結果、米国の経常赤字が増え、世界への総需要とドルの供給も増える。FRBが金融引き締めに転じると逆風になるが、当面はやらないと言っている。世界中でドルが膨らみ、グローバルインフレに向かうだろう。

――日米欧3極で、財政赤字が膨らみ、世界で資金需要が強くなるというわけですね。

米欧の国際経常赤字は、どこかの地域のGDPにプラスの影響を与える。もしかしたら、それは、コロナ危機で打撃を受けた新興国かもしれない。日米欧の資金需要復活により世界経済が熱を持てば、グローバルインフレに向かい、コモディティー商品には好影響を与えるだろう。その兆候を見るのはまだ早いが、金価格が最高値を付けたり、原油価格が回復したりしていることには注目している。

「週刊東洋経済プラス」では、「コロナ後はインフレか、デフレか」として、会田氏と上野氏のインタビュー拡大版を掲載するほか、両氏の論点をわかりやすく整理・比較した図を総論で掲載。インタビュー拡大版では、MMT(現代貨幣理論)や米中デカップリング、コロナ後の国際政治・通貨体制の見通しについても言及しています。
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