欧州サッカー「大物が動かぬ移籍市場」の裏事情 日本人CEOが明かすコロナ禍による環境激変

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長友佑都(右)をはじめとした欧州で活躍するサッカー選手たちの動向は、コロナ禍によって激変している(写真:AP/アフロ)

「今(取材時)は開幕直前の7月下旬ですが、通常シーズンにおける5月くらいの感覚。ベルギーで動きがあったのは、移籍金4億~5億円くらいの選手が最高で、中心は1億円程度です。レアル・マドリードが高年俸のルカ・モドリッチ(クロアチア代表)を売りたがっているというウワサも聞きましたが、70億~80億円といったビッグディールはまだないですね。

欧州サッカー市場の場合、ビッグクラブがお金を使うと中堅・中小クラブも連動して動き出す。イングランドやスペイン、ドイツが動いて、次にフランスが補強して、オランダ、ポルトガル、オーストリアが選手を取るというように連鎖していくんです。UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)が終わっていない今は収入見通しも立たないので、どこも動きづらいのが実情。われわれも同様です」

厳しい表情でこう語るのは、サッカー・ベルギー1部のシントトロイデン(STVV)を率いる立石敬之CEOだ。コロナ禍の中でイレギュラーな要素の多い今夏は、移籍市場も通常とは異なる形になっているからである。

欧州サッカーは今どうなっているのか

日本に先駆けて新型コロナウイルスが猛威を振るった欧州では、一部の国を除いて、3月に入ると大半のサッカーリーグがストップ。5月にドイツ、6月にポルトガル、スペイン、イングランドなどが再開にこぎつけ、2019-2020シーズンのリーグ戦全日程を終えるに至った。

その一方でフランス、オランダ、ベルギーは打ち切りが決定。2020-2021シーズンに向け、いち早く体制立て直しを図ることになった。

フランスは8月22日、オランダが9月12日に新シーズンの開幕日を設定する中、ベルギーは8月8日とかなり早くスタートを切ろうとしている。ただ、7月下旬に入ってアントワープを中心にコロナ第2波が到来。同地域に4週間のスポーツ活動規制が出され、予定どおりに開幕できるかどうか、不透明になりつつある。

動画配信事業などを手掛ける日本企業「DMM.com」が経営権を持つSTVVも、その渦中にいる。前シーズンのUCLとUEFAヨーロッパリーグ(UEL)が8月にズレ込んだ影響で、移籍市場が本格的に動いていないことも、チーム作りの難易度を上げているという。

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