学童保育「全国で雇い止め」が多発する根本原因 現場からパージされるベテラン指導員の悲鳴

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保護者からも不満の声はあがる。3年生の子どもを通わせる保護者は、上の子も学童に通わせていたため通算5年間、指導員の仕事を間近に見てきた。

「昨年度は、委託された企業からあれもダメ、これもダメと制限がかかり、これまでと同じようには行事や保育が行えなくなっていました。不満は感じていましたが、信頼できる指導員さんたちがいたので、不安はまったくありませんでした。

しかし、4月以降、まったく雰囲気が変わってしまい、あんなに学童が好きだった子が行きたがらなくなりました。3月までの指導員が、どれほどのスキルと知識をもって保育してくれていたのかと改めて感じています。誰にでもできる仕事ではないことを会社はわかっていません。市のパンフレットには『安心・安全』と書かれていますが、子どもが行きたくない場所を安心・安全と言えるのでしょうか。自分たちの意に沿わない指導員を切り捨てたのです」と憤る。

問題の原因は「民間委託」の急増

第1回口頭弁論を傍聴に来ていた保護者は、1年生の子どもを6月に退所させた。

「上の2人の子たちも学童に行き、家庭だけでは経験できないことをたくさんさせてもらったので、末っ子にも行かせたかった。でも、今はただ預かればいいという場所になってしまいました。指導員が子どもたちの心まで見ようとはしていません。守口市には無料の全児童対象の預かり事業がありますが、今の学童はそこと変わらない。せめて子どもが楽しいと言えば続けたんですが、行きたがらない。うちは退所しましたが、前の指導員さんたちには戻ってきてほしい。それほど学童は大切な居場所です」

学童保育の現場では、自治体の民間委託が急速に進んでいる。全国学童保育連絡協議会によれば、2015年に全国で767ヵ所だったが、2019年には約3倍の2451ヶ所にまで増えている。民間委託によってベテラン指導員が働き続けられなくなるケースは各地で起きている。

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