東京の町医者から見た日本のコロナ対策の弱点 検査体制と二類感染症扱いはこのままでいいか

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コロナ感染が公になることの弊害が大きくなりすぎている(写真:itakayuki/iStock)

「経路不明が5割弱」

朝日新聞の7月11日記事にこんな記述があった。連日200人以上、新型コロナウイルスの感染者が出ている東京都の発表だが、むしろそれほど感染経路をみな正直に語っていることに驚いた。

感染症法の第3章(12条~16条)には「感染症に関する情報の収集及び公表」の規定がある。これにより、感染症の疑似症患者などに「行政検査」をして、濃厚接触者などに「積極的疫学調査」をすることになっている。

感染経路を正直に語る患者が多いことは、厚労省クラスター班にとってはありがたいことだろう。

ただし、そのデータが生かせているのだろうか。「夜の街関連」という標語しか聞こえてこない気がする。実際、「感染者数抑制」という数字にもつながっているとは思えない。

医療機関のスタッフが感染した場合、公表することで引き起こされる事態はさらに深刻だ。

外来が閉鎖されれば、当然患者にとっても不利益となる。

医療スタッフの感染は本人だけでなく家族も差別の対象になる。子どもの幼稚園が学級閉鎖になったケースもある。

日本は「感染は自己責任」と考える傾向が強い

大阪大学の三浦麻子教授らの調査によると、日本ではほかの国よりも「新型コロナウイルスに感染するのは自己責任」と考える人が多いそうだ。

教授らが賛否の程度を6段階に分けたうえで400~500人に「感染する人は自業自得だと思うか」と質問をしたところ、「どちらかといえばそう思う」「ややそう思う」「非常にそう思う」のうちのいずれかを選んだのは、アメリカ1%、イギリス1.49%、イタリア2.51%、中国4.83%に対し、日本の割合は11.5%にも上った。

一方、「自業自得だとはまったく思わない」と答えた人は日本を除く上記4カ国が60~70%台だったのに対し、日本は29%台にとどまったそうだ。

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