中国の「コロナ経済対策」企業を最優先の狙い 補助金、減税、保証などの政策手段を総動員

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中国のコロナ経済対策は企業支援に重点を置くのが特徴だ。写真は中国財政省の記者会見(中国財政省のウェブサイトより)

新型コロナウイルスの流行による中国経済への打撃を緩和するため、中国政府は財政出動を大幅に拡大している。今年度予算の財政赤字を昨年度より1兆元(約15兆3000億円)多い3兆7600億元(約57兆5300億円)に増加させるとともに、新型コロナ対策のための特別国債1兆元を発行。その大部分が、政府がスローガンとして掲げる「六保(6つの保持)」のために投じられる。

六保は「雇用の保持」、「国民生活の保持」、「(企業など)市場主体の保持」、「食料・エネルギーの安全の保持」、「サプライチェーンの安定の保持」、「社会基盤の運営の保持」からなる。では、財政から捻出された資金は六保のどこにどのように使われ、どんな役割を果たすのか。

7月16日、中国財政省弁公庁が発表した六保に関する問答集から、その答えが見えてきた。政府の財政資金は主として補助金の支給、税金等の減免・納付猶予、融資保証、利子補給、中央政府から地方政府への交付金などの政策手段を組み合わせて使われる。

大学新卒者を採用した企業に補助金支給

欧米の先進国のコロナ経済対策は、国民に現金を直接支給するケースが少なくない。だが中国政府の対策は大部分が企業支援に傾斜し、それを通じて国民生活の下支えを目指しているのが特徴だ。

例えば六保の筆頭に掲げられた「雇用の保持」を実現するため、上述の政策手段を総動員して企業をサポートする。具体的には失業保険や社会保障費の企業負担分の減免や、中小企業が大学の新卒者を採用して1年以上の雇用契約を結んだ場合に補助金を支給するなどの対策が盛り込まれた。

本記事は「財新」の提供記事です

一方、個人向けの支援策としては、例えば20歳未満の中学および高校卒業者を対象に職業訓練の機会を提供し、費用を財政資金から補助する。さらに、対象者のうち農村部や貧困家庭の出身者には生活費も支援する。

「市場主体の保持」の主たる手段は税金等の減免だ。新型コロナの防疫対策に不可欠な医療物資の供給に携わる企業や、コロナの打撃が大きかった交通、飲食、宿泊、観光、映画などの各業界を対象に、社会保障費の企業負担の減免に加えて、公的積立金の企業負担分の延納や零細企業が国有物件を賃借する場合の家賃軽減などの支援策を実施する。

(財新記者:程思煒)
※原文の配信は7月17日

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