「生産性という呪い」から逃れて生き延びる方法 感性が劣化した「ネオリベ人間」から脱却する

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「ネオリベ的価値観」に支配された人が行きつく先は?(写真:tkc-taka / PIXTA)
カール・マルクスの古典的名著『資本論』。一度は手に取ったことはあるが、文章が難解でまったく読み進められなかったという方も少なくないのではないだろうか。また、その入門書ですら難しく、一応読み通したものの頭に入って来なかったという方も多いだろう。
ところが現在、その『資本論』入門書である白井聡氏の新刊『武器としての「資本論」』が7万部を超えるベストセラーとなっている。
「人生がつまらないのはなぜか」「イノベーションはなぜ人を幸せにしないのか」「なぜ自己啓発書を何冊読んでも救われないのか」といった、『資本論』本らしからぬ見出しが目に飛び込んでくる同書の魅力と、今読まれている意味を読み解く。

私たちが直面する社会現象から考える「病巣」

かつて学生運動に参加していたことを自慢げに語るご年配の男性に、「マルクスは読んだのか? 読んでない? まったく最近の奴は情けない。俺らの頃は必死で『資本論』を読んだけど、いまはその程度なんだよねえ」と上から目線で言われて以来、私の中で『資本論』は、「そういう感じのおっさん」がマウントをとるために使うものというイメージになり、なんの興味も湧かなくなっていた。

『武器としての「資本論」』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら)。※本書の出版を記念し、オンライントークイベントが行われます。詳しくはこちら

その後、数々の経済学の本を通して、マルクスが天才的な人物で、『資本論』が資本主義市場経済の原理を徹底分析した古典的名著であることを知ることになったが、いざページをめくってみるとその文章は難解で、「そもそもマルクスはなぜこれを論じているのか」ということが理解できず、決してすらすら読み通せるものではなかった。

『資本論』の入門書は山のように刊行されているが、丁寧に忠実に解説されている反面、得てして教科書的なものが多い。仕事に追われる日々の中でも興味をかき立てられ、もっと読みたくなるというタイプのものはなく、挫折してしまっていた。

白井聡著『武器としての「資本論」』は、この壁をスポンと軽快に飛び越えてしまう一冊だった。

本書の目次には、「『人生がつまらない』のはなぜか」「イノベーションはなぜ人を幸せにしないのか」「『みんなで豊かに』はなれない時代」など、興味深い章タイトルが並ぶ。

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