「株価は急落する」と決めつける人に欠けた視点 7月以降に「コロナ禍無視の反動」は来るのか?

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日本では、景気底入れのタイミングが、アメリカよりやや遅れ、5月が底となる見通しだ。日本の経済統計では、6月のハードデータ(実際の経済活動を推計するデータ)はまだ公表はなく5月分までしかない。だが、5月の家計調査や毎月勤労統計調査の内容は、ことごとく4月より悪い(実質消費支出や現金給与総額の前年比の落ち込みが、4月より5月の方が大きい)。

また14日(火)発表の5月の鉱工業生産をみても、前月比で8.9%減と、4月よりマイナス幅は拡大している。しかし日本の6月のソフトデータでは、8日(水)発表の景気ウォッチャー指数が、現状指数、先行き指数ともに、4、5月分から改善基調を示している。

豪州の指標が「中国の信憑性」を補完している

一方、7月16日(木)には、中国で多くの統計が発表された。中国の経済統計が信頼できるという前提が置ければ、であるが、前年比ベースの実質経済成長率は、1~3月の-10%(修正後)から4~6月はプラス11.5%に大きく改善した。

6月の鉱工業生産の前年比は4.8%増で、5月の4.4%増から若干ながら伸びを高めている。同月の小売売上高前年比は1.8%減で、市況解説では「前年比プラスが見込まれていたため市場に失望が広がった」というものを目にしたが、4月の2.8%からマイナス幅を縮めており、とりわけこの小売売上高の数値が悪材料になったとは考えにくい。

「中国の経済統計が信頼できるという前提が置ければ」と書いたが、オーストラリアの輸出統計をみると、同国から中国向けの輸出額は今年2月を最近の最低値として、3月から5月に向けて、増勢に転じている。これをみると、中国の景気が持ち直し、鉄鋼や銅の需要が拡大して、オーストラリアから鉄鉱石や銅鉱石の輸入を増やしていることが推察され、前述の中国の経済統計の動きと、並行的であると感じられる。

ちなみに、先々週辺りまで中国の上海総合株価指数がかなりのピッチで上昇し、先週は逆に下振れしたことが、話題となっている。だが中国株に投資しているならともかく、そうでなく日本やアメリカなどの株価動向を考えるうえで、中国株を眺めている、ということなら、中国株の上下の振れを、気にする必要はないだろう。

中国株式市場はグローバルな資金からかなり遮断されており、中国の株価の振れがグローバルな投資家に著しい影響を与えるとは考えがたい。また、そもそも中国の株価が景気実態を反映しているかどうか自体、怪しいからだ。

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