発達障害「専門医の多くが誤診してしまう」理由 そもそも白黒つけられる簡単な症状ではない

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近年注目を集める「発達障害」。実は医師による「誤診」も少なくないという。その理由とは?(写真:kai/PIXTA)  
近年注目を集める「発達障害」。実は医師による「誤診」も少なくないという。発達障害の患者が誤診によって受ける被害の実態とは? 精神科医の岩波明氏による新書『医者も親も気づかない 女子の発達障害』から抜粋・再構成してお届けします。

実のところ、著名な精神科医や発達障害の専門医であっても誤診がまれではありません。例えば「うつ病と診断したけれども、発達障害だった」「ASDだと診断したが、本当はADHDだった」などということは、しばしば見られています。

もちろん、私たち自身の診断が絶対に正しいということはありませんし、誤った判断もあることでしょう。

ただ、私たちの外来に紹介されて受診する患者さんを見ていると、多くの先生方には、発達障害の基本的な点が浸透していないように思えます。

「誤診」で発達障害が見逃されたケース

発達障害に関する誤診には、いくつかの理由があります。1つは、うつ病をはじめとして、対人恐怖症(社交不安障害)やパニック障害などの不安障害、躁うつ病など、発達障害が原因で起こるさまざまなトラブルをきっかけに生じる、2次障害との関連が問題となります。

このような場合、そうした2次障害に対する診断と治療が先行してしまい、根本的な原因である発達障害が見逃されがちです。こうなると、適切な治療が難しくなることが珍しくありません。

例えば、うつ病と診断されて抗うつ薬を飲み続けたが症状が改善されない、ADHDの治療薬に切り替えたら劇的に改善した、といったケースが実際に存在しています。「うつ病と診断されたものの、実は発達障害だった」ということは、よくある話です。

患者本人が「私はADHDだと思いますが、どうなのでしょうか?」と主治医に言っているにもかかわらず、「いえ、うつ病であることは確実です」「発達障害というのは考えすぎ」などと言って、正しい診断に行き着かない例が後を絶たないのが現状です。

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