15年前の東京・山谷は今と一体何が違ったのか

日雇い労働者の街に潜入した若者に見えた光景

人気宿泊街として注目を集めている東京・山谷は、「ドヤ街」と呼ばれる日雇い労働者の街だった(写真:tarousite/PIXTA)
外国人観光客が集まる人気宿泊街として、いま注目を集めている東京・山谷(さんや)。しかし、かつては「ドヤ街」と呼ばれる日雇い労働者の街でした。2005年、「幻冬舎アウトロー大賞」を受賞した『だから山谷はやめられねえは、そんなかつての山谷をリアルに描いたノンフィクション。宿なし・金なし・家族なしの中年男たちと寄せ場や職安に通い、飯場の世界にも飛び込んでいく「僕」。そこで見た衝撃の光景とは……。本書の一部をお楽しみください。

これが山谷の現在だ

かつて東京には泪橋という有名な橋があった。その橋は、罪人が刑場へ引かれるさいに家族が涙で別れを告げたと語られる。現在ではその橋はなく、名前だけが残るただの交差点だ。

「幻冬舎plus」(運営:株式会社 幻冬舎)の提供記事です

この交差点を南下した一角が、東京のどん底、悪の巣窟と言われる山谷になる。山谷は、公共職業安定所を中心としてドヤが200軒近く密集したドヤ街で、単身男性の日雇い労働者で形成されている。その人口は6000人とも8000人とも言われていて、日雇い労働者特有の流動性や景気の変動によって出入りが激しい。

以前は家族で暮らす者も多かったが、東京オリンピックを境に都営住宅に入居させられたため、今では女性や子どもの姿を見かけることはない。また最近では、住人の高齢化が進み、生活保護などの福祉受給者も少なくない。

住人の高齢化が進み、生活保護などの福祉受給者も少なくない(写真:Srdjanns74/iStock)

そしてついに僕は、そんな泪橋を渡ったのだが、山谷に足を踏み入れたという実感はあまりない。昼間のせいか、労働者の姿もほとんど見あたらない。これならただの下町の風景といった感じだ。

小道に入ると古い2階建てのドヤが建っているが、ただの古いアパートのようにも見える。そしてしばらく歩くと、いつの間にやら辺りは一般の住宅街に変わっていた。

山谷には他の住宅街とのはっきりとした境界線は存在しない。街の中には、大衆酒場・食堂・立ち飲み屋・パチンコ店などがあるが、街自体に活気やエネルギーというものは感じられない。かつてこの街で労働者による暴動が何度も起こったというのが信じられない。

次ページ暴動事件を機に全国的に知られるように
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