日立製作所、「週2~3日出社」を導入する理由 在宅勤務導入で「ジョブ型雇用」転換を加速

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日立製作所はコロナ禍をきっかけに、社員の働き方を大きく変えようとしている(編集部撮影)
コロナ禍をきっかけに、働き方が大きく変わる可能性が出ている。
日立製作所は感染の収束後も、社員の働き方は在宅勤務を標準としていく方針を発表した。在宅勤務そのものが目的ではなく、在宅勤務を変革のドライバーとして、1人ひとりの仕事・役割と期待成果を明確にする欧米流の「ジョブ型人財マネジメント」への転換を加速するためだ。
日立はリーマンショック時に7873億円という国内製造業で過去最悪となる最終赤字を計上。川村隆元会長兼社長(前東京電力ホールディングス会長)、中西宏明会長(日本経団連会長)、東原敏昭社長の歴代3トップのもとで、10年以上にわたって事業の選択と集中を大胆に進めてきた。同時に、グローバルトップ企業を目指して優秀な外部人材獲得に向けたジョブ型への働き方改革を進めてきた。
日立の働き方改革を推進してきたCHRO(最高人事責任者)の中畑英信執行役専務に在宅勤務導入の狙いを聞いた。

「在宅勤務率5割」の狙い

――新型コロナウイルスが収束した後も、2021年4月以降は「週に2~3日、(勤務日の)50%程度を在宅勤務にする」方針を発表しました。その狙いは何でしょうか。

事業のグローバル化を今後進めるうえで、多様な人材や働き方が必要になるからだ。

優秀な人材を広く採用するためには、日本に多い(年功序列型の人事制度である)「メンバーシップ型雇用」ではなく、職務(仕事の内容)を明確にし、そこに適切な人材を配置する、海外で主流の「ジョブ型雇用」が必須と考えている。

そのためには場所も時間も超えて仕事をする必要があり、それが在宅勤務にもつながる。今後、本格的な運用へ向けて労使で話し合いをしていく。

――なぜ5割なのですか?

外出自粛期間中は在宅勤務率が9割と高かったが、今後はおそらく出社が増える。今回、在宅勤務について3万人を対象に社内調査をしたが、いろんな意見が出た。「効率が上がった」「あまり変わらない」が半分。一方で「効率が少し下がった」という意見が4割ぐらいあった。

効率が下がった理由の1つはIT環境。パソコンの処理速度が遅い。2つ目はダイレクトコミュニケーションができないので(仕事が)やりにくいということだ。これらの課題はある程度残るため、外出自粛期間中のように高い在宅勤務率の確保は難しいと思っている。アメリカにある子会社の日立ヴァンタラは、平時でだいたい6割ぐらいが在宅勤務をしており、それぐらいが目安になるとみている。

もちろん出社をしないと難しい人もいる。エレベーターやエスカレーターなどの保守サービス、銀行や自治体のシステムエンジニア、工場勤務の従業員がそうだ。エンジニアでも大容量データを扱う場合、家のパソコンでは限界がある。そういう出社せざるをえない人々には手当を別途出していく。

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