専門家会議「廃止」に日本政府への心配が募る訳 中立性・客観性・誠実性の言葉はもう聞けない?

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専門家会議の顔となった尾身茂副座長(写真:つのだよしお/アフロ)

6月24日夕、新型コロナウイルス対策を担う西村康稔経済再生相は、政府に医学的な見地から助言をしてきた専門家会議(座長・脇田隆字国立感染症研究所長)を廃止すると発表した。

代わりに他分野の専門家を交えた分科会を発足させるという。市民にとっては、専門家会議が提示した科学的根拠に基づく生の情報によって、自分の判断で行動変容に対応できた。これまでにない施策過程の透明化が、国民的な理解を深めたともいえる。

「表に出過ぎだ」などの批判も

一方で、記者会見を繰り返して行動変容を求めるメッセージを発したことに対して「専門家会議が政策を決めている」「表に出すぎだ」などの批判があった。今回の「抜き打ち的」とも言える廃止宣告は、政府と専門家会議の軋轢を物語っているようにさえ見える。

西村経済再生相の記者会見より少し前、東京・内幸町の日本記者クラブでは、その専門家会議の脇田座長、尾身茂副座長、それに岡部信彦川崎市健康安全研究所長による会見が始まっていた。会見のテーマは「次なる波に備えた専門家助言組織のあり方について」という問題提起だった。

冒頭、脇田座長が用意した文書を読み上げた。感染拡大が続く中で「対策案を迅速に政府に伝えないと間に合わない」という危機感が高まり、政府に提起するだけでなく、その提案に至った理由を社会に説明し、市民に行動変容を求めるなど、感染防止策を共有する必要性を感じたという。そのことが本来の業務となる「助言」だけでなく、市民に行動変容を求めるメッセージなどにもつながっていった経緯を説明した。

これらの行動を「前のめり」だったと告白すると同時に、「外から見ると、あたかも専門家会議が政策を決定しているような印象を与えていたのではないかと考える」「人々の生活にまで踏み込んだと受け止め、警戒感を高めた人もいた」などと分析した。

確かに、記者会見や個人のSNSなどでの発信も含めた露出度は高かった。尾身副座長の朴訥とした語りは、テレビでもお馴染みとなった。

「これから1~2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となります」「約80%の方は、他の人に感染させません」。さらに「3密」「オーバーシュート」などの言葉が市民の間に定着したのも、新型コロナウイルス感染症に対する関心度が高いだけではなく、科学的根拠に裏付けられた信頼感に基づくものといえる。専門家会議の発した提言・見解・状況分析は10に及ぶ。

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