まじめな教師を休職に追い込む4つの深刻問題 心の不調を抱えながら勤務する先生も多い

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責任感が強い性格ゆえに自らを追い詰めてしまう教員も多くいます(写真:じろきち/PIXTA)
業務量の多さや、休日の部活動の指導、保護者からのクレーム対応など、教師を取り巻く状況は年々深刻化している。なぜこうした問題がなかなか解決されないのか。諸富祥彦著『教師の悩み』を一部抜粋・再編集し、教師が抱えているさまざまな悩みの根本原因に迫る。

文部科学省の調査によると、精神疾患で休職となった公立学校の教師は毎年ほぼ5000人。①増加する一方の雑務、②難しさを増す学級経営と③保護者対応、④複雑化する職場の人間関係という「教師を取り巻く四重苦」の中で勤務を続けた結果です。

しかも調査結果にあらわれている数字は、「休職にまで追い込まれてしまった人のみの数」です。なんらかの精神的な不調を感じながらも勤務を続けている先生方はこれよりはるかに多いのです。

そもそも教師という職業は、その性質上、燃え尽きやすく、うつになりやすい職業です。人間が相手の仕事で、努力の成果が目に見える形ではなかなか表れにくい。達成感が得にくい。相手のためを思って頑張っているのに、相手からはごく当然のことと受け取られてしまう。エスカレートした要求を突きつけられることすら珍しくない。こういった中で、あるとき突然大きな脱力感を覚えて「バーンアウト(燃え尽き)」状態に陥ってしまうのです。

責任感の強い性格が自らを追い詰める

もともと、教師を志す人間の性格特徴としては、根がまじめで几帳面、完璧主義、責任感が強い、他人に気を遣う傾向が強い……といったところがあります。これらは、うつ状態に陥りやすい人の性格特徴でもあります。

しかし、それが教師自身を追いつめます。まじめで責任感が強いので、「仕事がつらいのは自分の努力が足りないからだ」、「もっともっと頑張らなければならない」と、自分を追い込んでしまいがちなのです。

先生方の心はなぜこれほど疲れきっているのでしょうか。その要因は先にあげた4つです。

 ①多忙化・ブラック化
 ②学級経営、子どもへの対応の困難さ
 ③保護者対応の難しさ
 ④同僚や管理職との人間関係の難しさ

この4つのそれぞれについて、精神面の不調を引き起こすという観点からもう少し詳しく見ていきましょう。

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