日本も他人事でない「香港騒乱」の歴史的ヤバさ チベット系日本人が訴えたい世界情勢の現実

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香港における騒乱は日本にとっても対岸の火事ではないと筆者は主張する(写真:ロイター/Tyrone Siu)

全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)が5月28日、香港への「国家安全法制」導入の方針を決定。6月4日には香港立法会で中国国歌への侮辱行為を禁じる「国歌条例案」が可決され、抗議デモに参加した360人超が逮捕されるなど、香港を取り巻く騒乱は激化していく一方だ。

世界中が新型コロナウイルス感染対策に追われている裏で、中国が覇権獲得に大きく乗り出している。そのさまはまさに、拙著『2020年、世界の覇権争い ~世界はどう動き、日本はどうすべきかを読み解く~』で描いたとおりのことである。

この覇権争いは、日本にとっても無関係ではない。この国の平和・繁栄を守るために、私たちは世界で起きている現実を深刻に受け止め、対策を講じる必要がある。

野望を隠さなくてよくなった中国

そもそも一連の騒動は、2017年の中国共産党全国代表大会で習近平国家主席が「中華人民共和国の建国100周年に当たる2049年までにアメリカに代わって世界の覇権国になる」と高らかに宣言したことから始まっていると言っていいだろう。

アメリカが「世界の警察」という立場を離れ、資金援助も控え始めたことから、世界の秩序が少しずつ崩れ始めている。アメリカが一歩退いたおかげで、国際連合など世界規模の機関における中国の力が強くなった。今回の世界保健機関(WHO)のあり方は、その一例であろう。

時を同じくして、ヨーロッパでは欧州連合(EU)の崩壊が危惧され、アジアやアフリカを取り巻く環境も変わってきた。そこに新型コロナウイルスの世界的流行が起きたことで、医療用資材の中国への依存度の高さが浮き彫りになり、「マスク外交」なるものが成り立ってしまっている。まさに中国にチャンスが回ってきたのである。

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