中国の燃料電池車ブームは日本企業に追い風か トヨタや現代に加え、地場企業も開発に注力

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東風汽車が2019年に開発した「風神AX 7 FCV」(筆者撮影)

5月22日に北京で開幕した全国人民代表大会で、長城汽車や新華聯集団など地場企業のトップが中国における燃料電池車(FCV)産業の育成を提言し、電気自動車(EV)一辺倒からの政策転換を呼びかけている。

新型コロナウイルスの影響で、EVを中心とする中国の新エネルギー車(NEV)の販売台数は大きく減少している。「2025年にNEVが新車販売の25%を占める」という中国政府が描く大胆なEVシフトに暗雲が立ち込めている。

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一方で、2009年にEV普及を目的とした国家プロジェクト「十城千両」のFCV版(意見募集)が5月に中国国内で報道され、8つの省・市がFCV推進の候補地として挙げられた。近年、多くの地方政府が独自のFCV優遇政策を打ち出し、地場企業が相次いでFCVの開発に参入した。

国家レベルの産業推進策が実行されれば、中国FCV産業は発展の軌道に乗ることが期待される。EVシフトの次にはFCVブームの到来が予感されている中、FCV分野で先行する日系企業にとっては新ビジネスを創出するうえでの朗報であろう。

中国におけるFCV実用化の実態

中国汽車工程学会が発表した「省エネ・NEV技術ロードマップ」(2016年)では、2025年までにFCVの普及規模を5万台へ、水素ステーションを300カ所まで増やし、2030年にはそれぞれ100万台規模、1000カ所以上に拡大・整備することを目標として掲げる。

中国では、コークス炉ガスからの水素(副生水素)などが主な水素供給源となっている。生産された副生水素を高圧水素ガスチューブトレーラーで水素ステーションへ輸送するのは一般的である。EVに比べ、FCVは、航続距離が長く、燃料充填時間が短いなどの特徴を持っている。

しかし、製造コスト高や水素ステーションの整備・運営コスト高など、FCV実用化に向けた課題が多い。中国ではFCVが2016年から比較的採算が取れるバスや物流車(トラック)など商用車分野に導入され始めた。

2019年末時点、中国では商用車を中心とするFCVの累計販売台数が6178台、運営中の水素ステーションが約50カ所ある。2019年のFCV販売台数は2733台にすぎず、そのうち、物流車が全体の6割超を占める。このままいくと、中国政府が掲げたFCVの普及目標の達成は難しいだろう。

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