黒川検事長、「賭けマージャンで辞職」の衝撃度 問われる検察とメディアの「不透明な関係」

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首相官邸に入る安倍晋三首相(中央)。東京高検の黒川弘務検事長をめぐるスキャンダルが直撃した(写真:時事)

「官邸の守護神」とも呼ばれてきた東京高検の黒川弘務検事長が辞職することになった。

緊急事態宣言下の5月1日と13日に、黒川氏が懇意の記者の自宅マンションで賭け麻雀に興じていたことを、5月21日発売の週刊文春が暴露したためだ。安倍晋三首相の意向も踏まえた事実上の更迭となるとみられる。

前代未聞の定年延長によって検察ナンバー2に居座った黒川氏だが、検察首脳としての資格や資質を疑わせるスキャンダルが明らかになり、すみやかに辞職するしか道はなかったとみられる。政府は検察庁法改正案の今国会成立を見送ったばかりで、支持率低下に焦る安倍首相にはさらなる追い打ちとなる。

法務・検察は「最悪のタイミングだ」

週刊文春は「黒川弘務検事長は接待賭けマージャン常習犯」との見出しで大々的に報じた。グラビアを含めて9ページにわたる記事は、麻雀を終えて5月1日未明にマンションを出る黒川氏らの写真付きで、「言い逃れができないスクープ」(自民幹部)だった。

他の3人のメンバーは黒川氏と親しい産経新聞記者2人と朝日新聞社員とされ、朝日新聞は「不適切な行為」と謝罪。産経新聞は「不適切な行為があれば、適切に対処する」とコメントした。

この内容は5月20日午前に伝わり、一気に政官界に広がった。野党側は同日の衆院内閣委員会で取り上げ、菅義偉官房長官に黒川氏を辞任させるよう迫った。菅氏は「事実を確認できていないのでコメントは控える」とかわし、記者会見でも「法務省が適切に対応する」と苦しげな表情で繰り返した。

与党内からは「事実なら、辞任は避けられない」との声が相次ぎ、野党は「言語道断」「直ちに辞職させるべきだ」と即時更迭を求めた。当事者である法務・検察当局も「最悪のタイミングだ」と事態の深刻さを認め、21日午後までの事情聴取に対して黒川氏も辞職の意向を示したことから、後任も含めた交代人事を急ぐことになった。

黒川氏は2月に63歳で定年退官予定だったが、政府が過去に例のない解釈変更による閣議決定で定年を半年間延長。政官界には「官邸に近い黒川氏を総長に据える布石だ」との憶測が広がった。賭け麻雀疑惑について、野党は「余人をもって代えがたいどころか、検察トップに据えてはいけない人物」(立憲民主幹部)と安倍首相らの責任を追及している。

東京高検検事長がスキャンダルで辞任するのは、1999年4月に当時の則定衛同検事長(現弁護士)の愛人疑惑を、朝日新聞が1面トップで報じて辞任に追い込まれて以来のことだ。これにより、「黒川検事総長」説は完全に消滅した。

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