新型コロナでも「普通の葬儀ができるはずだ」 ウイルス専門家の西村医師が現状を問題視

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新型コロナで普通のお葬式はできないのか(写真:den-sen / PIXTA)
5月12日の国立病院機構仙台医療センター・臨床研究部ウイルスセンター長の西村秀一医師へのインタビュー記事『「PCR検査せよ」と叫ぶ人に知って欲しい問題』は読者から大きな反響をいただいた。その直後に、西村医師から「話したいことがある」と連絡を受けた。その内容が、本インタビューだ。「ひとりの人間として、これでいいのかと思う」とし、そして何よりウイルスを扱ってきた立場から、「新型コロナで亡くなった方の遺体の扱い、葬儀の仕方は間違っている」という。

「納体袋に密封」はひどすぎるし必要ない

――新型コロナに罹患して亡くなった場合、遺体から感染するリスクがあるとされ、遺族は通常のようなお葬式はできないのが現状です。タレントの志村けんさんや岡江久美子さんもそうでした。

大きな問題だし、ものすごい憤りを覚えている。結論から言えば、普通のお葬式ができるはずだ。家族が最後のお別れもできず火葬にも立ち会えなかったという報道は、衝撃だった。日本中でそんなことが行われているのか。それは悲しみに暮れる遺族の心をさらに踏みつけるような仕打ちだ。

――厚生労働省からの通知が出ているのですね。

現状では厚労省から自治体に事務連絡として指導が出ており、自治体から病院に通知が出ている。それによると、看護師は「防護服を着て遺体を保健所から届く非透過性の納体袋に入れて密封し袋の表面を消毒して、防護服を着た人が搬送して、そのまま火葬する」こと、そしていったん袋に入れたらもう袋は絶対に開けてはならないことになっている。

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しかし、私はそもそも袋などいらないと思うし、さらに密封する必要などないと考えている。納体袋というのは亡くなった人への敬意が感じられないひどいものだ。遺体を扱う葬儀社の人たちまでもがなぜ防護服を着なくてはならないのかも疑問だ。

私は遺体から感染する危険などないと考えている。この病気は、主に感染した人の口から出る咳やくしゃみ、あるいは場合によっては、呼気によって体外に排出される飛沫由来のエアロゾルと呼ばれる微細な粒子に含まれるウイルスをほかの人が吸い込むことによってうつる。

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