リア充に絡んだ「ひきこもり男」に魅了される訳

ドストエフスキー「地下室の手記」を読み解く

このコロナ禍で、リア充にうざい絡みを仕掛けたひきこもり男のエネルギーに魅了されるのはなぜか(写真:carlos castilla/PIXTA)

現在、世界中の人たちが家に引きこもらざるをえない状況にある。もちろん、日常へ戻る兆しは見えつつあるものの、地域によってはまだ外出もままならない。在宅が増えることによりDV(家庭内暴力)が話題になったり、喧嘩が絶えずコロナ禍離婚なる言葉が出たりした。そして朝から酒を飲む人が増えたり、コロナ鬱状態になったり、これまでと違う生活様式は、人びとに精神面でも影響を及ぼしている。

地下に閉じこもった究極の引きこもり主人公

ところで、究極の引きこもりの形態として、主人公の告白から地下に閉じこもるまでのエピソードを描いた古典がある。ドストエフスキーの『地下室の手記』(光文社古典新訳文庫)だ。同作は、『カラマーゾフの兄弟』にいたるドストエフスキーの重要作として刻まれている。ただ、ここではあくまで『地下室の手記』のみをもとに考えていきたい。

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この小説は2部にわかれている。地下に閉じこもった男性主人公の吐露が延々と書かれる「I 地下室」と、若き主人公が役所に勤めていたころの自意識過剰なエピソードが満載の「II ぼた雪に寄せて」だ。

ドストエフスキーの研究者には怒られるだろうが、簡単に要約すれば、「妄想ばかりを膨らますイタい男性が、リア充に絡んでいって、見事に惨敗する物語」となる。

主人公は40歳で他者を避けるようになって20年が経っている。遠い親戚が遺産を残してくれたため、役所も辞めている。ただし「地下生活40年なんだ」という記述もあり、本当に地下に何年くらいこもっているかは重要ではない。さらに遺産が本当にあるのか妄想なのかも重要ではない。地下とは自分の殻、あるいは自意識の象徴だ。

この小説はII から俄然と面白くなる。I は読者によっては退屈かもしれない。自由意志、幸福、正気、というものについて、支離滅裂ぶりが面白いのだが、読むのが辛いかもしれない。その中でも、こういった記述は目を引く。

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