三井住友が利益首位、3メガが直面する正念場 コロナの中で今期は予想通りの利益を出せるか

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三菱UFJを抜いて三井住友が純利益で首位に立った(撮影:今井康一)

ついに首位が代わった。5月15日、3メガバンクグループの2020年3月期決算が出そろった。三井住友フィナンシャルグループが純利益7038億円を計上し、三菱UFJフィナンシャル・グループの5281億円を大きく上回った。今の3大グループが形成されてから、純利益は三菱UFJがずっとトップ。三井住友が首位に立つのは今回が初めてになる。

もともと三菱UFJは、2020年3月期の純利益予想を9000億円と公表しており、利益トップが続くはずだった。だが、減損で見通しが狂った。2019年12月末にインドネシアのバンクダナモン(出資比率94.1%)の株価低迷によりのれんを一括償却し、2020年2月に純利益の予想を7500億円まで引き下げていた。

その後、タイのアユタヤ銀行(出資比率76.8%)でも同様に減損処理を実施。最終的な影響額はバンクダナモン2128億円、アユタヤ銀行1305億円と、2社の株式減損だけで純利益を約3500億円押し下げた。そこに新型コロナウイルスが直撃。保有株式の減損や貸し出しに対する引当金の増加が重なった結果、純利益は当初の水準を大幅に下回ることになった。

アジアの銀行買収で問われる成果

三菱UFJはこれまで、東南アジアの高い成長率を取り込もうと、現地の商業銀行の買収を繰り返してきた。連結子会社であるアユタヤ銀行やバンクダナモンのほかにも、ベトナムのヴィエティンバンクやフィリピンのセキュリティバンクと資本業務提携をしている。

2019年、当時社長だった三毛兼承氏は、グループの「東南アジアにおける商業銀行の買収は完結した」とし、「これまではバランスシートの拡大を意識してきたが、今後は採算性を重視する」と語っていた。今回は、この拡大戦略における買収で多額の損失を強いられた格好だ。2020年4月に就任した三菱UFJの亀澤宏規新社長にとっては厳しい船出といえる。ただ、亀澤氏は「(東南アジアの成長を取り込む)グローバルの方針に変化はない」と強調。それだけに、今後求められるのは買収先の収益最大化だ。

株価下落から減損を強いられたものの、アユタヤ銀行は三菱UFJの出資以降、利益を伸ばしており、2019年度は増収増益を達成した。バンクダナモンも2019年度の当期純利益は3.9%増となった。この成長を維持し、さらに加速させられるかがポイントだ。

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