中国で「ネット医療互助」が静かに拡大する背景 加入者1億5000万人。アリババ系が積極展開

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中国ではインターネット発のユニークな金融商品が絶え間なく登場している(写真はアント・フィナンシャルのウェブサイトより)

中国IT大手の阿里巴巴集団(アリババ)の金融会社、螞蟻金服(アント・フィナンシャル)は5月13日、同社が手がけるネット医療互助のプラットフォーム「相互宝」の新商品を発表した。高血圧症、高脂血症、心血管病、腎炎などの慢性疾患を持つ人にがんの保障を提供する「慢性病互助プラン」で、満39歳以下の加入者には最高30万元(約453万円)、満40~59歳には同10万元(約151万円)の互助金が支払われる。

これは「重大疾患互助プラン」、「高齢者がん保障プラン」に続いて発売された相互宝の3つ目の互助商品だ。それぞれのプランは完全に独立して運営され、あるプランの加入者の分担金が別のプランの互助金の支払いに使われることはない。アント・フィナンシャルは今後、このような加入者の対象を絞った独立型の互助商品を続々と投入する計画だ。

加入しやすさと分担金の安さで人気に

ネット医療互助はインターネットから生まれた新しい金融商品で、加入者数が静かに拡大している。先頭を走るアント・フィナンシャルの相互宝はすでに加入者数が1億人を超え、累計3万4000人以上に保障を提供した。同社傘下のシンクタンクのレポートによれば、ネット医療互助の総加入者数は2019年に1億5000万人に達し、2025年には中国の人口の3割強に当たる4億5000万人をカバーするという。

その仕組みは一見、保険会社の医療保険に似ている。だが運営会社は保険業の認可を受けておらず、保障の支払いに関する厳格な義務を課されていない。いわば保険もどきのグレーな商品であり、過去には運営会社が約束した保障を支払えなかったケースもある(訳注:ネット医療互助の分担金は、1年間に支払われた互助金の総額と運営会社の管理費の合計を加入者数で割った額を後払いするのが主流。定額の掛け金を前払いする医療保険とはその点が大きく違う)。

本記事は「財新」の提供記事です

それでも加入者が増え続ける理由は、医療保険よりも契約のハードルが低く、分担金も安いからだ。例えば慢性疾患を持つ人の場合、医療保険にも契約できる商品はあるが、種類が少なく掛け金も割高だ。一方、相互宝の慢性病互助プランは当初から慢性疾患を持つ人が対象。しかもアント・フィナンシャルによれば、1年間の分担金は188元(約2840円)を超えない見通しだという。

(財新記者:呉雨倹)
※原文の配信は5月13日

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