コロナ後の日本を襲う「サイバー犯罪」の難題 セキュリティー軽視は国力を損なう大問題に

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サイバーセキュリティーを担当するヤフーの中谷昇・執行役員にサイバー犯罪の現状について聞いた(撮影:梅谷秀司)
外出自粛やリモートワークの一般化で、人々の生活、仕事の場はこれまで以上にデジタル空間にシフトしている。5G(第5世代移動通信システム)の普及でこの流れはさらに加速する一方で、「サイバー犯罪」の社会的リスクは高まる。
目には見えないサイバー空間で、犯罪者は何を思考し、どう動いているのか。インターポール(国際刑事警察機構)や警察庁で情報技術犯罪の捜査に長く携わった、ヤフーの中谷昇・執行役員(サイバーセキュリティ担当)に最前線を聞いた。

企業へのサイバー攻撃が急増

――IBMの調査によれば、2019年、企業側のシステムの脆弱性を突いたサイバー攻撃被害が前年比3.8倍に増えています。

まず今、世の中が大きく変わっていることを指摘したい。犯罪者の関心事はいつの世も、最も手っ取り早くお金を儲ける方法はどういうものか、ということだ。それはまさに、弱いところを突くこと。リアル空間も同じで、鍵がかかって、監視カメラがあるところに盗みに入るのはハードルが高い。そうでない場所を狙うだろう。

とくにサイバー空間の場合は今、インターネットに「つながっている」ことがより当たり前になっている。つながっていない時代は、どんな行為もスタンドアローン(単独で動作している状態)で、拡張性がなかった。

でも今は、いろいろなデバイス(機器)やサービスがネットにつながっている。リモートワークなどを通じて皆さん実感していると思うが、何もかもがつながっていることによって得られる利便性は計り知れない。

これは犯罪者から見ても、同じように動きやすく、便利な空間だ。昔は情報セキュリティーを考えるときに、重視すべきとされていたのは「C・I・A」の順番だった。これは、Confidentiality(秘密性)、Integrity(完全性)、Availability(可用性)。でも5G、サイバーフィジカルの時代を迎えて、順番が変わった。

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