「緊急事態宣言」の延長は本当に正しかったのか 新型コロナウイルス政策をめぐる3つの疑問

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緊急事態宣言は延長された。この対応は正しいのか。筆者には素朴な「3つの疑問」が残っているという(写真:共同通信社)

緊急事態宣言が延長されたばかりのタイミングなので、ここは改めてじっくりこれまでの新型コロナウイルス対策の政策に関して、少し「外野的な議論」をしてみたい。

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政策の是非は問わず、どのような立場にも立たず、純粋に議論することは有益だと思う。

そこで今回はコロナ対策の政策の議論を観察してきた中で、私が素朴に疑問に思っていることを、五月雨式に書いてみたい。私自身結論のないものを、あえてここで3つ取り上げてみたいとおもう。

いまさらだが、そもそも「行動変容」って何だ?

まず1つ目。行動経済学者の私にとって、一番不思議なのは「行動変容」という言葉だ。緊急事態宣言を延長するかどうか議論するときにも、「行動変容」が十分に起きているか、8割削減が達成されているか、というフレーズが何度も繰り返される。

しかし、そもそも「行動変容」って何だ?

これほど多用されているのに、政府が直接説明したのを記者会見の報道では見たことがないし、新聞などでもワード解説みたいなものは目にしない。さらに疑問なのは「本当にみんなわかっているのか?」「わかって使っているのか?」という点だ。

「いまさら何を言っているんだ。『行動が変わること』だよ。それ以外あるのか?」と言われるかもしれない。

しかし、どういう行動の変化を指すのか? たとえば、馬券が当たったから、いつも食べているカツ丼の並を上に変えるということか?あるいは、うちの息子に彼女ができて、急におしゃれになったとか?毎日風呂に入るようになったとか?カネが必要だからバイトを始めたとか?

行動経済学の範囲に入るのかもしれないが、その他の学問などいろいろな分野でも使われているようだ。おおむね、学習の心理学から出てきた概念で、「経験によって生じる比較的永続的な行動の変化」ということのようだ。また、医療保健の分野では、人間の行動が変わるときにはいつくかのステージを経て変化するという「行動変容ステージモデル」というものが使われているらしい。禁煙の研究などで生まれたようだ。

次ページ「馬券が当たって上カツ丼」が行動変容ではないワケ
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