倉庫勤務「今も休めない」非正規50歳の長い憂鬱

90分かけて電車通勤、マスクは3日間使い回し

工場での事故のせいで、手のひらの一部にはやけどのあとが残る。神経が切れて感覚のない指先もある。「自分なりに頑張って働いてきた」と言うタカノリさん(写真:タカノリさん提供)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「発達障害とうつで生きづらく、希望がない」と編集部にメールをくれた、50歳の男性だ。

大手流通会社の倉庫で契約社員として勤務

「新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、テレワークにご協力ください」

朝7時半すぎ、大阪市内を走る地下鉄車内に男性のアナウンスが流れる。タカノリさん(仮名、50歳)はそのたびに心の中でこう突っ込む。「お前に言われんでも、できるくらいならしとるわ」。

大手流通会社の倉庫で働く契約社員。うつ病と発達障害の診断を受けており、障害者雇用枠での採用だ。車内の様子について「空気が重い。好きで出勤している人はいませんから。座っている人はみんな『俺の隣りには座るな』というオーラを出してます」と話す。

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週末の出勤日などは、大阪駅の改札に人っ子一人いない瞬間もある。「不思議な光景です。以前観た映画を思い出します。人類が滅んだ大都市で、男が1人生き残るやつ……、なんでしたっけ?」と言うので、私が「もしかしてウィル・スミスの『アイ・アム・レジェンド』ですか」と聞くと、「そうです、そうです」とうなずいた。

倉庫内ではピッキング(商品を集める)作業などに就いている。庫内で働く人たちのほとんどは、タカノリさんと同じ非正規労働者。会社は朝礼を中止したり、ロッカーの使用を禁止したりするなど一定の3密解消のための対策は取ってくれているという。

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