中国自動車市場で下位メーカーが脱落加速の訳 猟豹汽車が自社工場の運営を同業他社に委託

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SUVが主力の猟豹汽車は2018年から深刻な販売不振に陥っていた(写真は猟豹汽車のウェブサイトより)

市場の競争激化に新型コロナウイルスの流行が重なり、中国自動車業界で下位メーカーの脱落が目立ち始めている。4月27日、湖南省の猟豹汽車(レオパルド)が長沙工場の運営を浙江省の吉利汽車(ジーリー)に委託する計画が明らかになった。

吉利汽車はこの計画に関する戦略提携の覚書を湖南省政府および長沙市政府と締結。猟豹汽車から引き継いだ工場でEV(電気自動車)などの新エネルギー車を生産する。「猟豹汽車が1日も早く苦況を脱出できるよう支援するとともに、湖南省で新エネルギー車産業を大いに発展させたい」と、吉利汽車の董事長(会長に相当)の李書福氏は述べた。

猟豹汽車の長沙工場は2017年末の生産開始からまだ2年余りの新しい工場だ。主に新エネルギー車を生産するため51億3000万元(約773億円)を投じて建設され、年間15万台の生産能力を持つ。しかし販売不振で1年近く前から操業を停止していた。

前身の軍需工場からSUVメーカーに発展したが…

自社工場の運営を同業他社に任せざるをえなくなった背景には、市場の縮小で競争が激化するなか、下位メーカーの多くが生産能力過剰に悩んでいる実態がある。2019年の中国の新車販売台数は前年比8.2%減少。さらに2020年1~3月期は新型コロナの流行で前年同期比42.4%も落ち込んだ。競争力の劣るメーカーが淘汰を迫られるのは必然の状況だ。

猟豹汽車は湖南省政府系の国有企業、長豊集団の傘下にある。その前身は人民解放軍の軍需工場で、1996年から日本の三菱自動車の「パジェロ」をライセンス生産し、SUVに強い中堅メーカーとして一定の認知度を得ていた。2017年には主力SUVの「CS10」を中心に12万台以上を販売したが、2018年以降は深刻な販売不振に陥っていた。

本記事は「財新」の提供記事です

「もともとSUVの市場規模は相対的に小さい。外資系の合弁メーカーが新型SUVを続々と投入するなか、猟豹などの“2流ブランド”は市場環境の変化についていけず、生存空間が狭まっている」。自動車市場の動向に詳しい専門家は、財新記者にそうコメントした。

(財新記者:鄭麗純)
※原文は4月27日配信

財新 Biz&Tech

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