企業・個人へのコロナ補償が曖昧すぎる大問題 緊急事態宣言で浮き彫りになる補償の曖昧さ

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企業活動が自粛を求められる中、補償に対する問題点が次々と浮き彫りに(写真:Kiyoshi Ota/ロイター/アフロ)

新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染拡大を受け、4月7日に安倍晋三首相は東京都をはじめとした7都府県に対し「緊急事態宣言」を発し、4月16日にはその対象を全国へ拡大しました。

緊急事態宣言により、企業活動が一層の自粛を求められる中、企業や個人に対する補償が曖昧であることや、補償が実行されるまでのスピードが遅いことが大きな社会問題になっています。

本稿では、社会保険労務士としての観点から問題点を整理するとともに、それを解消するための方向性についても言及してみようと思います。問題点として取り上げたいことは4つあります。

休業手当の支払い基準の明確化が必要

第1の問題点は、コロナにより事業主が自粛をした場合の休業手当の支払い基準が不明確であるということです。

労働基準法の定めにより、事業主が従業員(正社員のみならず契約社員やパート・アルバイトも含む)に休業を命じた場合、原則として、平均賃金の60%以上の「休業手当」の支払い義務があります。しかし、従業員側に原因がある休業や、事業主側にも従業員側にも責任があるとは言えない不可抗力による休業の場合には、休業手当の支払義務が免除されることとなっています。

この点、緊急事態宣言が出る前の、事業主の独自判断による自粛は、「休業手当」の支払いの対象となる可能性が高いことは衆目の一致するところです。これに対し、緊急事態宣言が出た後に、都道府県知事による自粛要請を受け入れて、事業主が行った休業は、休業手当の支払義務を免除する「不可抗力」に該当するかが問題となります。

日本の緊急事態宣言は、諸外国のロックダウンのように法的強制力を持たず、事業主は休業要請に応じる義務まではないため「不可抗力かどうか」が法的にグレーゾーンになってしまっています。

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