コロナ禍で競馬が無観客開催続ける大きな意義 震災乗り越えた8年前と対照的な福島競馬場

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福島競馬初の無観客となった1Rのスタート(2020年4月11日、筆者撮影)

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。緊急事態宣言はついに全国に広がった。こんな時でも中央競馬は無観客とはいえ開催を続けている。日本中央競馬会(JRA)は4月23日、あらためて5月末まで無観客で開催することを発表した。5月31日に東京競馬場で行われる競馬の祭典第87回日本ダービー(2400m芝)も無観客となった。

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筆者のホームである福島競馬も4月11日に開幕した。1918年6月28日に初めて福島競馬が開催されてから、102年の歴史の中でも無観客での競馬開催は史上初めてとなった。

コロナ禍で競馬を開催する意義とは何か、そして歴史的な無観客競馬を書き残すことに意味があると考えて、そのことを記したい。

初の無観客競馬で何が起こったのか

中央競馬は新型コロナウイルス対策のため政府のイベント自粛の要請に応えて、2月29日から無観客開催となっている。この日は中山・阪神・中京の3競馬場が無観客となった。

日本中央競馬会(JRA)の前身となる日本競馬会時代に、1944年にダービーなどを無観客で能力検定競走として実施したケースがあったが、1954年のJRA発足以降では初の無観客開催だった。筆者も2月29日、中山競馬場で取材した。

中山競馬場は正門などに無観客開催を告知する看板を設置。騎手、厩舎関係者と出走馬の馬主、開催に最低限必要な係員とメディア関係者など一部の人だけが競馬場に入場したが、普段なら歓声が響くスタンドにファンの姿はなく静まりかえった。通常通りパドックの周回や本馬場入場はあったが、レースの実況と競走馬の走る足音が響くだけで、不思議な静寂の中で終日レースが行われた。

勝負どころで沸くはずの歓声がない。何より、お客さんの姿がないパドックを競走馬が周回する光景には違和感があった。この日のメイン11RサンシャインSを勝ったサンアップルトンを管理する中野栄治調教師は騎手時代にアイネスフウジンで大観衆のダービーを制している。「声援がないのはさびしい」との言葉を筆者は重く受け止めた。

3月1日の中山記念をダノンキングリーに騎乗して制したベテラン横山典弘騎手は「お客さんがいてファンあっての競馬なんだとあらためて感じた。声援がないので、やっぱり勝ってもさびしい。(新型コロナが)早く収束して大勢のお客さんがいるところで大きいところを勝ちたいと思う」と神妙な表情を見せた。

3月7日の阪神のチューリップ賞でマルターズディオサに騎乗して1着となった福島県二本松市出身の田辺裕信騎手は「桜花賞はお客さんが入って開催できて、皆さんに見ていただければ。ボクらはやれることをやるだけ」と語った。

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