安倍内閣はなぜ「一律10万円」を受け入れたのか 自民党コロナ本部長が語る政府内調整の内幕

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いくつもの方針転換の背後に何があったのか。自民党の新型コロナウイルス関連肺炎対策本部の本部長も務める田村憲久元厚労相に聞いた(写真:ロイター/アフロ)
政府は4月20日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策として、全国民へ一律10万円を給付することなどを含む総額25兆6914億円の補正予算案を閣議決定した。4月7日に一度閣議決定した予算案を組み替えるという、異例の手続きを経た予算案だ。
今後は4月27日に国会に提出し、4月中の成立を目指す。
だが、予算案提出までの政府・与党内の議論は二転三転した。現金給付案は当初、「減収世帯に30万円」だったが、公明党などの強い要請を受けて一転、「一律10万円」案に変わった。
政府は休業要請を受け入れた事業者への「休業補償」にも否定的だったが、西村康稔経済再生担当相は19日、国の臨時交付金を「休業支援」にも充てられるようにすると方針転換した。
いくつもの方針転換の背後に何があったのか。経済対策はこれで十分と言えるのか。政策通として知られ、自民党の新型コロナウイルス関連肺炎対策本部の本部長も務める田村憲久元厚労相に聞いた。

与党内から強い修正の要求が出た

――「減収世帯に30万円」が一転して「一律10万円」に変わりました。閣議決定までされた補正予算案が組み替えられるのは初めてのことで、異例の事態と言えます。

実は、もともと自民党内には条件をつけずに一律に給付したほうがいいという声が多かった。ところが役所が「一律で配るより減収世帯のみに30万円を給付するほうが早い」と主張したため、生活に困っている人をいちはやく助けるためにはスピード感のほうが大切だと考えて「減収世帯に30万円」案を一度は了承した。

ところが国民から「わかりにくい」「不公平だ」という声が大きく出てしまった。

――連立与党の公明党は、赤羽一嘉国土交通相と遠山清彦財務副大臣を政権から引き上げる(連立離脱)ことまでちらつかせて「一律10万円」を求めたと言われています。

詳しいことは控えるが、与党内から強い修正要求が出てしまったことは事実。安倍総理が「30万円案の時と同じくらいのスピード感で給付できる」ことを役所に確認し、決断をしたということだ。5月中にも給付が始まるはずだ。

結果的にだが「一律10万円」は今回の補正予算でやる分にはよい施策になったと私は考えている。

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