原油はもはや「粗大ゴミ」になってしまったのか 「史上初のマイナス」後の原油価格はどうなる

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アメリカのテキサス州でも新型コロナによる影響は深刻。原油は「粗大ゴミ」になってしまうのだろうか(写真:新華社/アフロ)

4月20日のNY原油先物市場は、歴史に残る1日となった。取引終了が21日に迫った期近5月限(ぎり)に売りが殺到。最後は何と価格がマイナス圏に突入、一時1バレル=マイナス40.32ドルという、とんでもない安値をつけたのだ。

前週末17日の終値が18.27ドルだったから、わずか1日で58ドル強も値を下げた格好となる。しかも、20日のNY時間の午前中までは、価格はかろうじて10ドル台を維持していたのだ。だが昼過ぎには10ドル割れ。その後、取引所が「5月限に限ってはマイナスの価格でも取引が可能」と発表したこともあって売りが加速、一気に値を崩した。

一体、価格がマイナスになるというのはどういうことなのか。実際問題として、そうしたことが起こり得るのだろうか。マイナス金利を初めて見た時も相当に混乱したが、「モノの価格のマイナス」というのはさらに頭の中が「?」「?」「?」と、クエスチョンマークだらけになりそうな状況だ。まずはマイナス価格が実際に起こった経緯と、その意味について説明したい。

商品先物市場では、納会直前に急激な価格変動も

実はこうした急激な価格変動というのは、商品先物市場ではたまにではあるが、起こることだ。もちろん平常時に起こるものではなく、先物の納会日(取引の最終日)の直前に、受け渡し(デリバリー)に絡む要因によるものがほとんどだ。

NYダウ平均やS&P500種などの株価指数先物市場と比べると、違いがよくわかる。これらは、納会を迎えれば現金決済をするのに対し、商品市場では納会日までポジションを持ち越した場合、実際にその商品のデリバリーが行われる。これが両者の大きな違いである。

商品市場は先物市場とは別に現物取引の市場があり、それぞれの価格は日々変動している。現物市場と先物市場の価格差は「ベーシス」と呼ばれ、主にその商品の保管コストや金利が反映されたものとなっている。通常の場合、先物市場の価格は、納会日、つまりはデリバリーが近づくにつれ、徐々に現物価格に収斂されていくことになる。

現物市場でそれなりの需要と供給がある時には、納会日の取引も特に問題なく進み、受け渡しが行われる。だが、その前後に現物市場で需給のバランスが崩れている場合には、一筋縄ではいかなくなる。

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