NYの「小売業界」は1カ月でここまで激変した 開いているのはスーパーと薬局だけに

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ニューヨークのスーパーでは感染予防対策が徹底的されている(筆者撮影)

ここ1カ月あまりの間に、アメリカ・ニューヨーク市内の様相は激変している。新型コロナウイルスの猛威を受け、政府が国家非常事態宣言を発令したのは3月13日だが、最近になってこれを5月15日まで延長すると発表した。

「ゴーストタウン化している」。アナリストたちは、「眠らない街」とさえ言われたニューヨーク市内の現在の様子をこう表現する。高級店や老舗百貨店が並ぶ5番街から繁華街のタイムズスクエアにいたる目抜き通りでは、大半の店舗がシャッターを閉ざしている。市民は自宅待機を強要され、街中の人通りや地下鉄、バスの乗客も極めて少ない。駅構内では、「できるだけ自宅待機するように」とのアナウンスが繰り返されている。

5番街の店舗は軒並み休業

5番街では、高級百貨店サックスフィフスアベニューや、メイシーズ、J.C.ペニー、ブルーミングデールズなどの百貨店から、H&MやZARA、GAPといったファストファッションストア、そして靴、宝石店、レストラン、バー、カラオケにいたる多くの店舗が一時休業を余儀なくされた。

老舗百貨店のメイシーズは新型コロナの影響で、アメリカ全土の870店舗が臨時の休業に入り、従業員約13万人の大半が帰休した。ただ、オンライン注文を処理するデジタル事業部、配送センター、コールセンターなどの一部の部門は作業を続けている。百貨店のコールズも販売店員、配送センターなどの一部を除いて多くの従業員が帰休に入った。

ニューヨーク州で唯一開店しているのは、市民の生活に欠かせない食料品や薬を扱うスーパーマーケット、薬局チェーンだ。もちろん、ここにはウォルマートやターゲットといった大型小売店も加わる。市民は食料品、生活用品の買物に殺到し、人との接触による感染を嫌う消費者はオンラインでの買物に流れている。

振り返ると、アメリカ政府は3月15日、感染拡大防止と国民の安全・生活安定化を討議するため、食品小売業者や食品メーカーなど約20社の経営トップをホワイトハウスに集めた。政府は各首脳に、食品のサプライチェーン確保、食品店の営業継続、消費者が必要とする食料品・必需品の補充に努めて欲しいと要請。また、アメリカの一部で発生しているパニック買いを助長しないように、買物環境を整えることを促した。

こうして、アメリカ全土の食品スーパーは事実上、1日24時間休まず働き続ける作業が始まったが、感染拡大やパニックを防ぐために、さまざまな対策がとられている。例えば、買物客の健康、安全性を保持するため、開店時間を短縮し、終業後の夜間に食品を補充。同時に清掃、消毒を始め、店内、倉庫、事務所のすべての領域を徹底してクリーニングする。この特別作業のために、従業員には時給200円が上乗せされている。

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