大韓航空「創業一族の経営権争い」で深まる苦悩 双方が4割超の株式確保、争い長期化が濃厚に

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経営権争いが長期化している大韓航空。写真は2019年7月に北京国際空港に到着した大韓航空機(撮影:UPI/アフロ)

新型コロナウイルスが世界的に拡散し、世界の航空会社が打撃を受けている。それは韓国航空業界も例外ではない。ただ、韓国最大手の航空会社である大韓航空はコロナ影響のほかに、深刻な問題を抱えている。創業者一族による経営権争いだ。

2020年3月27日、大韓航空などを擁する韓進KALグループの株主総会が開かれ、経営権争いの第1ラウンドが終わった。敗北したのは現在「3者株主連合」と呼ばれる私募ファンドのKCGI、半島(バンド)建設、そして創業者一族の趙顕娥(チョ・ヒョンア)氏の3者だ。

趙顕娥氏は大韓航空副社長だった2014年、自社便に搭乗したものの、離陸直前に客室乗務員の対応が悪いとして搭乗口にまで引き返させた「ナッツ・リターン」事件の当事者だ。

「ナッツ姫」にのしかかる相続税負担

2019年4月、趙顕娥氏の父親で創業家2代目経営者だった趙亮鎬(チョ・リャンホ)会長が急死し、弟である趙源泰(チョ・ウォンテ)氏がグループの後を継いだ。ナッツ・リターン事件以来、経営を離れていた趙顕娥氏がそれを不満に思ったのか、経営復帰をもくろんで3者株主連合で株式を買い集め、経営権を握ろうとした。しかし、現経営陣の壁は厚かった。

それでも3者株主連合は株式を継続して買い入れ、経営権争いを長期戦に持ち込もうとしている。問題は、趙顕娥氏の影響力が徐々に弱まっていることだ。それは、父親の死去による相続税負担が重くのしかかっているためだ。

2020年4月8日、故・趙亮鎬会長の1周忌が執り行われたが、長女である趙顕娥氏はついに姿を見せなかった。株主総会ではまだ勝負がついていないと、誰もが気づかざるをえない日となった。

実際のところ、3者株主連合は捲土重来を期して準備中だ。3者株主連合は株主総会当日の3月27日、「韓進KALグループが危機から脱し、経営正常化が軌道に乗れるように、今後も株主としてのすべての努力を傾ける」と一歩も引かない姿勢を見せた。

実際に3者株主連合は株式の保有比率を今でも高めている。KCGIは4月1日、「3月27日から31日まで、韓進KAL株式36万5370株を買い入れた」と発表した。さらに株主総会当日にも14万5306株を購入している。KCGIは特に、同じ韓進KALグループである「韓進」社の株式を売って韓進KALの株式を買い入れている。これにより、KCGIが持つ韓進KALの株式保有比率は19.36%となっている。

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