コロナ感染者を罵倒する人々への強烈な違和感 翻って自分の首を絞める行為となりかねない

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「道徳的な意味」に振り回されることは事態の悪化を助長することにしかならない(写真:filadendron/iStock)

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い社会不安が急速に高まる中、「感染者叩き」「クラスター(感染者集団)叩き」が拡大している。

国際的には人種や国籍などに絡む「コロナヘイト」と呼ばれる現象が広まっているが、日本では感染者そのものを「疫病神」とみなしてスティグマ(負の烙印)を押し付けるだけでなく、微熱や咳などの症状がある人が外出して人に会ったり、仕事をしたりしたことに対するバッシングが熾烈化している。ソーシャルメディアやネット掲示板では、感染者の氏名、住所、職場などをさらして拡散する動きが活発になっており、関係先の人々に対する差別や嫌がらせが続出するなど、深刻な人権侵害に発展するケースも生じている。

先月、ゼミやサークルの懇親会で集団感染が発生した京都産業大学(京都市北区)に抗議の電話やメールが殺到したのはその典型といえる。報道によれば、「感染している学生の名前や住所を教えろ」「火をつける」「殺しに行く」など脅迫的な内容もあった。京産大の学生というだけでアルバイト先から出勤停止を言い渡されたり、解雇されたりしたという。

感染者が謝罪にまで追い込まれる事態も

新たに感染者やクラスターの発生が公表されるたびに、このような感染者とその関係者に対する懲罰的な言動が湧き起こり、場合によっては謝罪にまで追い込まれている。「病気を起こすウイルス」ではなく「病者の人格」に原因を求める恐るべき不条理といえるが、これが全国各地で顕著な傾向になってきている。

最近では、4月7日に新潟県上越市で初の感染者が確認されたが、本人や家族、勤め先の会社への差別や嫌がらせが絶えないとして、4月10日に村山秀幸市長が緊急記者会見を開く事態になった。ソーシャルメディアなどで事実と異なる情報が大量に出回り、「感染者と会社の同僚やその家族などに対する誹謗中傷の書き込みが広がっている」と指摘。「男性の勤める会社の社長によると、知らない人からの電話で『ここから出ていけ』などと言われたり、会社に入るところを写真に撮られたりするなど差別的な扱いを受けている」とした(新型コロナ感染者への誹謗中傷やめて 上越市長が会見 市民に冷静な対応求める/上越タウンジャーナル/2020年4月10日)。

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