薬剤師が「処方箋の裏側」で密かに担う重責 医師が出した処方箋に訂正を求めるケースも

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薬剤師の仕事は「処方薬を渡すだけ」ではありません(写真:IYO /PIXTA)

全国に約5万9000店あると言われる調剤薬局。その数は約5万5600店のコンビニ(2019年末、日本フランチャイズチェーン協会調べ)よりも多く、日本中にあふれています。

そんな薬局で働く薬剤師の仕事は、処方箋を基に薬を調合して患者に渡す、単純作業に見られがちです。

しかし実際の役割は、患者に「処方薬を渡す」仕事のみにとどまりません。薬剤師は、医師から処方された内容が患者に適切なものなのかどうかを判断し、疑問点を持った場合は医師に確認を取っています。これを「疑義照会」と呼びます。

患者の中には、医師が出したのに、問い合わせを再度することは失礼にあたらないのかと心配される人もいます。また少数派だとは思いますが、疑義照会があっても「いいから、私の言う通りにしなさい」という医師もいます。

薬剤師の処方エラーの発見は珍しくない

しかしながら薬剤師が、処方箋の記載不備やなんらかの処方エラーを発見することは珍しくありません。「平成27年度全国薬局疑義照会調査報告書」によれば、疑義照会率は2.56%に上るとされています。また、薬学的な疑義照会で処方の内容の調整がされることで、年間約236億円の医療費削減効果があり、1件あたり換算で、643.2円の節減になると同調査では示されています。

さらに厚生労働省による「平成30年度診療報酬改定の概要(調剤)」によれば、年間の処方箋枚数はおよそ8億枚にも及びます。仮にですがこれに2.56%を乗じれば年間2000万枚近くの処方箋に疑義が生じていることになります。

薬局で疑義照会がされなければ、そのまま患者に渡ってしまいます。疑義照会の内容はさまざまです。単に医師が処方オーダーを意図せずに打ち間違えるケースや、類似名称の薬剤の誤選択、日数の打ち間違い、あるいは、患者が医師に別の薬局でもらっていた薬やアレルギー歴を伝えなかったために一緒に飲んではいけない薬剤が出されることもあります。

そこで薬剤師は医師に対して、日数の過不足の調整、内服薬の飲み方の指示の訂正、処方の記入漏れ、類似薬剤の重複、飲み合わせの悪い薬剤の処方、より飲みやすくするための調剤方法の提案などを行います。

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