「野球選手のサイン」値決めする古書店主の矜持 どんな価値があるのか?小野祥之氏に聞いた

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店主の小野祥之氏。持っているのは三原脩のサイン(筆者撮影)

東京・神保町は本の街として知られる。その一角の古書街にある「古書BIBLIO」を知っているだろうか? ここは知る人ぞ知るスポーツ古書とサイン類などメモラビリア(コレクション対象となるグッズ)の専門店だ。「BIBLIO」は、野球選手のサインの値決めをする店といわれている。

「古書BIBLIO」の外観(筆者撮影)

「多分、そうじゃないかなあ。専門的にやっているのは僕くらいだし」

天井までうずたかく積まれた書籍や色紙の間から顔を出して、店主の小野祥之が話す。

小野には「なんでも鑑定団」のような鑑定番組や、鑑定士からも問い合わせがある。

ルーキーは活躍しないとサインの価値が落ちる

最近、野球選手のサインの転売が問題視されている。今年2月には、ロッテのゴールデンルーキー佐々木朗希のサインが、もらった10分後に転売サイトに掲載されて物議をかもした。

「最近のサインの転売は、価値が瞬間最大風速的に高まったタイミングで、売り抜けようとしています。確かにそういうニーズがあるのでしょうが、1カ月後に価値があるかどうか。入団時に騒がれた人気選手のサインは、ヤフオクなどのオークションサイトを通じて高値で転売される。けれど、期待どおりに活躍しなかったら、価格は下がってしまう。菊池雄星選手や大谷翔平選手など、今も活躍している選手のサインはそれほど価格が落ちないですけどね」

話題性のある選手のサインは一時的に高騰するが、その選手の活躍次第で、価格は定まってくる。

では、サインの「出来映え」は関係ないのだろうか。キャンプ地などで選手がマジックでなぐり書きするサインでもいい値段がつくのだろうか?

「なぐり書きはやっぱり安い。毛筆でのきちんとした揮毫、落款まで入っていれば、それだけで価値が全然違いますね。最近お亡くなりになった野村克也さんは達筆で、色紙に揮毫したものはもともと高かったです。落款まで押してあるものなら、何万円、ときには何十万円の値がつくこともあります。これから価格は上がるでしょう。

でもメモ帳に鉛筆で描いたようなサインは、家に飾りたいとは思いませんよね。売っても1000円がいいところじゃないでしょうか。キャンプでTシャツにサインしてもらったようなものは、僕らとしては値段がつけにくい。そういうのは自分の想い出として、持っておくほうがいい」

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