日本のロックダウンが腰砕けになりかねない訳 明確なルールがなければ応じない人を防げない

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2月末に政府から臨時休校要請があった直後の東京・原宿。罰則のない要請では人の動きを止めきれない(撮影:今井 康一)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威を振るっている。

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は3月23日、「パンデミックは加速している。最初に報告されたケースから10万症例に達するまで67日、次の10万症例までに11日、その次の10万症例までに要した期間はわずか4日だった」と危機感を募らせた。

3月30日時点で、世界の累計感染者数は70万人を超え、3万人以上の死者が出ている状況だ。

こうした事態を受けて、アメリカ、イタリア、スペイン、フランス、イギリス、スロバキア、タイ、インドネシア、ニュージーランドなどの国において、非常事態宣言が発令されている。具体的な内容は国によって多少異なるものの、公共機関や学校、店舗などを閉鎖し、生活必需品の買い物や医療上の理由などを除外事由とした外出の禁止など、国民の行動を制限する「都市封鎖」(ロックダウン)状態となっている。多くの場合、違反者に対して罰金も科される。

翻って日本では、2月28日に、北海道で緊急事態宣言が出されたが、3月19日に解除された。東京都では、3月25日には1日のうちに確認された陽性患者数が40人を超えたことを受けて、小池百合子都知事がロックダウンの可能性に言及した。さらに同月28日に安倍晋三首相が会見を行ったが、「現在は瀬戸際」という認識を示し、緊急事態宣言の段階ではないと述べている。

ロックダウンの法的根拠とは

3月13日に新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象に新型コロナウイルス感染症を追加する改正法が成立した。これにより、首相が区域と期間を定めて緊急事態宣言を発令し(特措法32条)、指定区域の属する都道府県の知事が私的権利の制限を含む感染拡大の抑制措置を取ることが可能となった。

しかし、この特措法によって可能となるのは、都道府県知事が、

(1)住民に対し、外出しないよう要請すること(同法45条1項)

(2)学校・社会福祉施設・興行場等の管理者等に対し、施設利用やイベントを停止・制限するよう要請すること(同条2項)

である。さらに、施設管理者等に対しては、要請に従わない場合に指示できる旨が規定されているが(同条3項)、諸外国の禁止命令のように罰則が科されているわけではない。

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