スペースジェット、「巨額減損」でも平気なのか 三菱重工業に押し寄せる「コロナ減速」の波

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6度目の初号機納入延期に追い込まれた三菱航空機の「スペースジェット」。写真は3月18日に初飛行にこぎつけた最終試験機(写真:三菱航空機)

事業化に成功すれば確実に会社の柱になる――。

三菱重工業がそう見込んで8000億円近い資金をつぎ込んできた小型航空機「三菱スペースジェット」事業が暗礁に乗り上げている。

2008年に事業化を決定してから設計変更による開発遅延を繰り返し、2020年2月には6度目となる初号機納入延期を発表。2020年夏の予定だった全日空への初号機引き渡しは2021年度以降になった。

事業化計画は事実上の仕切り直しに

事業化計画は事実上の仕切り直しといえる。足元では発電向けのタービン事業が好調で、財務体質も改善している三菱重工だが、開発遅れが財務の悪化を招く可能性もある。

「安全第一の姿勢で、型式証明取得試験に集中する。スケジュールの遅れに関して大変申し訳なく思っている」

2月上旬に開いた2019年4~12月期決算に関する記者会見で、三菱重工の泉澤清次社長は硬い表情を崩さなかった。スペースジェットがアメリカで型式証明を取得するのに必要な最終試験機の完成が遅れていること、一部サプライヤーが担当する開発案件が残っていることなどを説明。詳しいスケジュールは最終試験機が開発地である名古屋から試験を行うアメリカに移動してから説明するとした。

同時に、これまでスペースジェットの開発を担ってきた三菱航空機の水谷久和社長が4月1日付けで退任し、米国三菱重工社長の丹羽高興氏が後任の社長に就くと発表した。

記者から開発遅延の責任について質問が及ぶと、泉澤社長は「水谷社長も成果を出している。誰か特定の個人に責任を帰す考えはない」と言い切った。

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