トイレットペーパーに殺到する群集が厄介な訳

非常事態は自分こそが正しいと思ってしまう

「群衆」の判断に吸い込まれて自分を見失った人は、「買っておかねば」という心理に突き動かされることになるが、本人の頭の中はこんな具合だ。

「落ち着いて行動しろとは言うけれど、そう言われて “みんな” が落ち着くとは思えない。だって自分はこんなにもトイレットペーパーが買いたくて不安でたまらず、落ち着いていないんだから。“みんな” 絶対に明日も必死で並ぶはず。だったら自分だけ落ち着いていたら、いつまでも買いそびれてしまうだけだ。並ばないわけにはいかない」

だから「買いそびれることはありませんから」と声がかけられているのだが、一度「買っておかねば」という「群衆」の判断をとった人は、他人もまた自分と同じように考えて行動するに違いないと「群衆的に」考える。

そして、現在の非常事態の環境においては、自分の判断こそが正しく、自衛のためにもこうするのが最適なのだと、自分の行動を正当化してしまうのである。

行動することで不安を解消したい、という個人の欲求

寒いときにやたらと「寒い寒い!」と言ってしまうように、不安な状態に置かれたとき、「不安だ!」「ああ、どうしたらいいんだ!」「不安だ不安だ!」という具合に、不安を表明し、感情を思いっきり吐露してバタバタすることによって、自分自身が抱えている不安を癒やそうとする心理がはたらくことがある。そして買物依存症ではないが、なんでもいいから行動に移し、抱えた不安を解消したい、という欲求も生まれてきたりもする。

トイレットペーパーの買いだめ行動の底にも、この心理が潜んでいるのではないかと思う。

もともと、ウイルス感染者がじわじわと増えているという潜在的な不安に浸っている中、日々「不安だ」「困った」と周囲の人々が感情を漏らしている。ワイドショーは必死に情報を伝えようとし、速報が入るなど混乱気味で、行列する人々の姿を何度も放送したりする。

すると耐えられなくなって、せきを切ったように不安感情が爆発し、「これはいかん!」とトイレットペーパーを買いに走り、あたふたするという行動を起こす。必死の購買行動、それ自体がその人の不安の表現になっている部分があるわけだ。

抱える不安の表現としての購買なら、「在庫は十分にあります」と公式発表されても効果はない。どんなに買っても現在進行形の不安は癒やされないだろうし、買い占めの対象はトイレットペーパーでなくてもいいのかもしれない。事実、「足りているのにどうしてこんなに買っちゃったんだろう」と思う人もいるだろう。

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