トイレットペーパーに殺到する群集が厄介な訳

非常事態は自分こそが正しいと思ってしまう

買い占めまくる女性から1パックを奪い取り、つかみ合いになったらしい(画像:幻冬舎)

現実にはトイレットペーパーの不足は起きないし、各国政府当局が「在庫はある」と呼びかけており、生命維持に関わる品物でもないのだが、なぜこんなにも人々はトイレットペーパーに血眼になるのだろう? その心理について考えてみたい。

パニックとは「われ先に」の競争心

そもそもパニックとはどういう状態なのか。

意識することは少ないが、日常、人は大きな集団の中に抱かれて生活している。そこで何か事件が起きたとき、それまでの協力や秩序が一瞬のうちに崩壊して、それぞれがてんでんばらばらな個体となり、われ先にと競争し合う群れとなるのが「パニック」だ。

さらに「あれをゲットせよ」「出口に向かえ」などの「ゴール」が示されていると、不安とともに「自分だけが乗り遅れるのではないか?」という競争心がかきたてられて、ばらばらの個体が一目散にそのゴールに向かって押し寄せる「群衆」となる。トイレットペーパー・パニックはまさに群衆の競争心だ。

人間は、「群衆」になるときと「公衆」になるときがある。ばらばらの個体になって、衝動的に一目散にゴールめがけて走り出すと「群衆」になるが、とくに日本人は、非常事態において全体の状況を理解して理性的に秩序を守る「公衆」になる性質も持ち合わせているように思う。

災害が起きた場合など、逃げ惑う際には「群衆」として振る舞ったとしても、避難所ではお互いに協力しようという気持ちを持ち、整然と並んでマナーを守る。公式発表があればみんな静かに聞こうという姿勢をとったりもする。これが「公衆」としての振る舞いだ。

ここには、「私的な不安」や焦りの感情に終始するか、意識を公的な感覚に切り替えるかの違いがあると思う。まわりと状況が共有できないと、「自分だけが取り残されてしまうのでは?」という目隠しされたような不安に陥り、その感情を解消することだけを目指してやみくもに行動してしまうものだ。

しかし、まわりと状況を共有すると、「みんな同じ大変な状態なんだな。自分勝手に考えていたらいけないな」というふうに、それぞれが少しずつ私的感情を抑えるようになる。そして、「みんな不安なんですよね、落ち着かないとだめですね」というふうに公的な感覚で協力し始めるのではないだろうか。

次ページ今回は「私的な感情」に終始し「群衆」が生まれた
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