パンデミック宣言で「五輪開催」も無理筋な理由 特効薬がない新型ウイルスには我慢しかない

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東京五輪まで残り4カ月弱、3月11日にはWHOが新型コロナウイルスのパンデミックを宣言しました(左写真:今井康一撮影、右写真:新華社/アフロ)

WHO(世界保健機関)が、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的感染爆発)を”ようやく”宣言した。3月11日(現地時間)のことだ。

中国では感染者の増加が収まりつつあるとはいえ、累計で8万人を超え、韓国、イタリア、イランで感染者や死者が急増している。アメリカでも感染が増えはじめて、欧州からの入国禁止措置を打ち出した直後のことだった。感染予防のための宣言というより、認めざるをえなくなって、現状をそう評価した、という感覚が強い。

私は、南極を除く五大陸に感染が広がった時点で、いや、それ以前からもはやパンデミックであると指摘してきた。にもかかわらず、WHOが宣言に踏み切らない事情を、過去のトラウマにあると伝えた(『新型肺炎拡大でぬぐい切れない中国政府への疑念』)。

2009年の新型インフルエンザ(H1N1亜型)が発生したとき、当時のマーガレット・チャン事務局長は「今、すべての人類が脅威にさらされている」としてパンデミックを宣言する。

ところが、新型インフルエンザは弱毒性であり、季節性のインフルエンザと大差のないことがわかると、事態は”空振り”に終わってしまう。これは、WHOが製薬会社と結託した「自作自演」ではないか、と疑われるまでになり、欧州を中心に世界中から猛烈な批判を受けた。このことが今回のパンデミックの宣言に及び腰だった事情ではないか、と。

あまりに遅すぎたパンデミック宣言

今回の宣言を受けて海外メディアもまったく同じことを報じている。いまさらのWHOの対応に呆れている。

季節性のインフルエンザの致死率は、WHOによると2017~18年の流行で、0.1%とされる。SARS(重症急性呼吸器症候群)で9.6%。そして今回の新型コロナウイルスは、今のところ2~3%とされる。

症状の出ない感染者がいたり、検査の実施されていない隠れ感染者がいることから、この数値はもう少し下がるのではないかとも見られているが、それでもインフルエンザよりも高いとされる。

仮に1%としても、10倍の致死率だ。それが13日現在、世界で13万人以上の感染者を出している。WHOはさらに感染者は増えるとしているし、事実、増え続けている。SARSでも最終的な感染者は8096人だった。

こうした状況に、SARSが蔓延した当時の私の現地取材の経験から、いくつか触れておきたいことがある。

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