希代の名経営者ほど「後継者」が決まらない理由 日本電産・ファストリ・ソフトバンクの悩み

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(左から)ソフトバンクグループの孫正義氏(撮影:今井康一)、ファーストリテイリングの柳井正氏(撮影:梅谷秀司)、日本電産の永守重信氏(撮影:ヒラオカスタジオ)

今年2月、日本電産の永守重信会長は、絶対に代えないと言ってきた吉本浩之社長を更迭し、4月1日付で関潤氏に交代させるという会見を開いた。

永守会長と言えば、1973年にたった4人でプレハブ小屋で会社を創業し、たった一代で、売上高1兆5000億円、の超優良企業を築きあげた名経営者。だが、この名経営者をもってしても、後継問題は迷走した。

新たに社長に就任する関氏は、2019年12月1日付で日産自動車の新経営体制でNo.3の副COOポジションについていた人物である。永守氏は、その関氏を日産自動車から引き抜いて、自分の後継者に指名したのである。

思い出してみれば、ユニクロやGU(ジーユー)を展開するファーストリテイリングでは、2002年に柳井正会長が玉塚元一氏を後継社長兼COOに指名して経営を任せてみたが、2005年には結局あきらめて、柳井氏が会長兼社長に復帰している。

ソフトバンクグループでは、孫正義会長兼社長が2015年6月の株主総会でグーグルから招いたニケシュ・アローラ氏を代表取締役副社長に就任させ、自らの後継者であるとしていたが、アローラ氏は翌年には退任させられた。孫氏は、アローラ氏をグーグルから引き抜くため、1年で約165億円もの報酬を支払ったというのだから本気だったのであろうが、結局たった1年の命だった。

どんな後継者を求めているのか

なぜ、こうも後継者選びはうまくいかないのか。本記事では、日本電産の永守氏、ファーストリテイリングの柳井氏、ソフトバンクグループ孫氏という日本を代表する名経営者における後継者選びを分析してみたい。

まず、永守氏から見てみよう。

学歴は職業訓練大学校電気科卒。その後音響機器のティアックに就職。子会社である山科精器の取締役を経て、28歳で日本電産を創業。その後は、「ヒト、モノ、カネのどれを取っても大企業に勝てる要素は1つもない。あるのは平等に与えられた24時間。だから競争相手の2倍働く」と言って、ハードワーキングに次ぐハードワーキングで、今の日本電産を作りあげた。

ヒトの採用方法もユニークで、食事が早ければ仕事も早いという発想で、試験会場の弁当を先に食べた順に合格を出したり、「大声テスト」や「便所掃除」を実施して人材を選んだという(永守重信著『奇跡の人材育成法』PHP研究所)。

そして、採用した人材には、「叱って、怒鳴って、ボロクソに言って、皆の前で恥をかくことによって闘争心や反発心を呼び起こす」方法で育て上げたという。

つまり、永守氏は、自分のようなたたき上げの後継者を求めている。

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