被差別部落訪れた外国人が日本人に伝えたい事 「知らないこと」の楽さに慣れないでほしい

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差別の存在を「知らない」ことはいいことではない(写真:Graphs/PIXTA)

先日、仕事で大阪の被差別部落を訪ねる機会があった。何の仕事かと思うだろう。NHKの番組「バリバラ~障害者情報バラエティ~」の収録で、アフリカ系アメリカ人である私が被差別部落の地域を訪れ、地域の暮らす人の話を聞く、という内容のものだった。これにより、現在日本の被差別問題を考える、というのが番組の趣旨だ。

この模様は、2月6日と13日、「BLACK IN BURAKU~アフリカンアメリカン、被差別部落をゆく~」と題して放映された。

初回が放送された翌日、日本の友人が何人か私のところに来て、番組を見たと伝えてくれた。「どう思った?」と私が聞くと、ほぼ全員が似たような回答をした。異口同音に「とても難しかった」と。何がそんなに難しかったかと私が尋ねると、1人が「複雑なテーマだった」と答えた。2人、3人と同じ理由を口にしたとき、私は聞くのをやめた。

知らなかったから、気にしなかった

数日後、日本人の友人と話した際に、こんな会話があった。

友人:「BLACK IN BURAKU」を見たよ!

:どう思った?

友人:難しかったし、とても複雑だった。

:なるほど。

友人:でもわかったよ。私が思い出したのは、あなたと出会った、3年くらい前のこと。混雑した電車の中で外国人の隣の席が空いていることについて話してくれたよね。でも、私はそういう光景を見たことがなくて、それをあなたに言うと驚かなかった。だけど、言われてから、そういう空席を見なくなった。

:そうなの?

友人:空席を見かけるたびに、私がそこに座るようになったから。日本人の隣の空席に座るか、外国人の隣に座るかを選べるとしても、外国人の隣を選ぶことにしたんだ。でもいつも変な気分になる。

前は何も感じなかった。まるで、あなたのせいでそういうことについて感じたり、考えたりするようになったみたい。前はそうじゃなかった。何も知らなかったから、何も気にしなかった。

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