父の逮捕で「お嬢様」から転落した彼女の苦闘

転校を勧められ周囲からはいじめを受けた

新学期の初日、美月は担任から職員室に来るように言われた。

「高橋さん、大変だったわね。転入を希望していたS高校、欠員募集出てるみたい。ちょうどよかった、早めに書類書いてちょうだい」

教室ではいつもと違う雰囲気を感じた(写真:iStock.com/paylessimages)

唐突な言葉に美月は混乱した。

「え? まだ私、学校やめませんけど……」

担任の顔色が変わった。

「でも……」

「母が、3月までの学費は納めてるって……」

「来年はどうするの?」

「来年の学費は、祖父母が出してくれるはずです」

担任は困った様子だった。

「そう。わかりました。ここにいることが、あなたにとっていいことなのか、わからないけど……

冷たくなったクラスメート

担任と一緒に教室に入ると、いつもとは違う雰囲気を感じた。何人かのクラスメートの視線が冷たく感じられたのだ。

「大変だったね」

休み時間、親友の玲奈が駆け寄ってきた。

「もしかして、事件のこと? みんな知ってるの?」

カナダにいた美月は、父親の逮捕報道を全く知らなかった。父親がパーカをかぶって顔を隠し、手錠をかけられてパトカーに乗り込む映像が全国に流れていたのだ。美月は急に足がすくんだ。

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「びっくりしたよ。もうどっかに逃げちゃってると思ってた。まさか、また学校で会えるなんて思わなかった」

放課後、美月は所属している管弦楽部の練習に向かった。

「高橋さん、どうしたの?」

音楽室に入るなり、先輩が驚いた顔で寄ってきた。

「え? 練習しようと思って……」

「練習って、そんな場合じゃないんじゃないの?」

美月が困惑していると、顧問がやってきた。

「高橋さん、何してるの? 練習どころじゃないはずでしょ、ほら、帰りなさい、早く

美月は追い出されたような気がした。家に帰っても何もすることなどない。せっかく、演奏していろんなことを忘れたいと思ったのに……。

*   *   *

この続きは『息子が人を殺しました』(幻冬舎新書)をご覧ください。

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