父の逮捕で「お嬢様」から転落した彼女の苦闘

転校を勧められ周囲からはいじめを受けた

「パパの会社がね、倒産したの……」

美月は耳を疑った。

「ここにはもう住めない。おばあちゃんのとこに行くから荷物をまとめて」

美月が通う中高一貫のミッション系女子校は、努力して入学できた憧れの高校だった(写真:iStock.com/paylessimages)

美月は急いで自分の部屋に入ると、すでにほとんどの荷物が整理されていた。

「ごめん、時間がないの。後でゆっくり説明するから、とにかく片づけて」

純子は急かすように言った。

「パパはどこ?」

父親の居場所を尋ねると、予想だにしない答えが返ってきた

「警察」

純子は、美月が帰国するまで、事件のことは伏せていた。これからしばらくは海外に行く余裕などない。娘にはせめて、ギリギリまでカナダでの滞在を満喫してほしかった。

「学校はどうなるの?」

美月は恐る恐る尋ねた。

「おばあちゃんの家の近くの高校に転入できるって」

「いつから?」

「もう、すぐにでも」

「嘘でしょ、やだ……」

美月は思わず泣き出した。美月にとってR女子高校は、難しいと言われながらも努力して合格した憧れの高校だった。制服も大好きで、他の高校の生徒になることなど、とても考えられなかった。

「もう、学費を払う余裕がないの……」

これまで聞いたことがないような純子の力ない言葉に、美月はどん底に突き落とされたような気がした。

これまでどおり高校生活を続けたい

翌朝、純子と美月は、まるで夜逃げのようにこっそりと荷物を運び、実家のある田舎に向かった。

美月はせめて、残る3カ月、高校2年生を修了するまでR女子高校に在籍したいと純子に頼み込んだ。学費はすでに納めており、在籍する権利はあるはずだ。祖父母は、美月があまりに可哀想だと、来年の学費を自分たちがなんとか工面しようかと言い出した。

高校生活が続けられる可能性が出てくると、美月はようやく一筋の光を見つけたような気がした。

母の実家から学校までは、高速バスで片道1時間半。早起きは楽ではないだろうが、これまでと同じように学校に通えるならば、どんなことでもする覚悟だった。

次ページ覚悟して学校へ行ったけれど……
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