ボルネオで奇跡の復活「元名鉄特急」数奇な歩み 北アルプスから会津へ、そして南国の島へ

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一部区間で南シナ海沿いを走るサバ州立鉄道。日本ではありえなかったキハ8500系と海の組み合わせは新鮮だ(筆者撮影)

昨年12月にお披露目された、JR東海のハイブリッド式特急車両HC85系の試験走行車。2022年度の営業運転投入に向けて試運転が始まっており、高山線の特急「ひだ」高速化に大きく寄与した先代のキハ85系気動車は、その後置き換えられてゆく運命にある。

そんなキハ85系の兄弟車両として、一足先に引退した名古屋鉄道(名鉄)のキハ8500系がある。名鉄線と高山線を直通して新名古屋―高山間を結ぶ特急「北アルプス」用に製造された同車は、まさに「名鉄版キハ85系」といったところで、性能面は限りなくキハ85系に近づけてある一方、車内の意匠はこれぞ名鉄特急車という雰囲気だった。高山線内ではキハ85系と連結することもあり、まさに兄弟車と呼ぶにふさわしかった。

特殊な用途から、わずか5両の製造に終わったキハ8500系であるが、そのうち2両が奇跡的にも海を渡り、南国の島で活躍している。国内の鉄道を転々とし、ついには海外に転じたキハ8500系の数奇な運命を振り返ってみたい。

名鉄から会津鉄道へ

1991年にデビューしたキハ8500系が本来の用途で活躍した期間はわずか10年。2001年9月、乗客数の減少から特急「北アルプス」そのものが廃止されてしまったためだ。

会津鉄道に転じ「AIZUマウントエクスプレス」として雪の中を走るキハ8500系(写真:kiha8500/PIXTA)

だが、キハ8500系は名鉄から引退後、福島県の会津鉄道に転籍し、「AIZUマウントエクスプレス」として再デビューを飾った。同鉄道では、私鉄とJRを直通できるという設計を最大限に活かし、往年は東武鉄道―野岩鉄道―会津鉄道―JRと、4社を直通する列車として運行された。

JR新宿駅と東武日光・鬼怒川温泉を直通する特急列車の運行が始まった2006年3月からは、JR新宿発の特急からも乗り継げるダイヤで、鬼怒川温泉―喜多方間(平日は会津若松)を結んだ。結局使われることはなかったが、方向幕には「特急 鬼怒川温泉」や「急行 喜多方」などの表示も用意していた。

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