武漢からのチャーター便「8万円負担」は妥当か 邦人の帰国は政府からの強制措置ではない

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中国・武漢から退避した邦人を乗せ、羽田空港に着陸する日本政府のチャーター機(1月30日午前、写真:共同通信)

中国・武漢市(湖北省)で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が全世界に恐怖を広げている。日本をはじめとしてアメリカ、韓国などの各国政府は民間チャーター機を飛ばし、武漢に在住している人のうち、帰国を希望する自国民を自国へ戻す措置を採っている。

1月29日午前に1機、30日午前にも1機、合計2機合わせて約400人近くの武漢周辺に住む日本人が、日本政府がチャーターしたANA(全日本空輸)のボーイング767型機で羽田空港に到着した。武漢にはまだ200人以上の帰国希望者が残されており、今後も第3、4便のチャーター機の運航が予定されている。

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このチャーター便をめぐって取り沙汰されているのが、帰国者の運賃負担だ。政府が1人当たり片道分約8万円を請求する方針を示していることに対して、「政府が負担すべし」「8万円は高いのではないか」などという異論の声が出ている。

1月29日の参院予算委員会では、立憲民主党の杉尾秀哉参議院議員から運賃をすべて政府が負担してはどうかという趣旨の発言が飛び出した。与党幹部からも同種の意見が聞こえてきている。

これに対して、1月29日の参院予算委で茂木敏充外相は従来から同様のケースでは搭乗者本人が費用を負担していると説明。菅義偉官房長官も1月30日午前の記者会見で本人負担を求める政府方針を変えない考えを示した。

強制ではなく、希望者がチャーター便に搭乗している

今回、武漢へ飛んだチャーター機の運航費用は、発注した日本政府がANAに全額を支払う。それと前後して、搭乗者は約8万円を外務省へ支払うというスキームのようだ。

在中国日本国大使館のホームページには、湖北省在留の日本人に対して、チャーター機で武漢から日本へ帰国を希望する場合の手続きについての情報が掲載されている。そのうち「搭乗に当たっての留意点」には、「帰国に際して費用が発生することが想定されます」と記されている。同意の上でチャーター機に搭乗するための手続きが行われている。

つまり武漢に在住する日本人の帰国は日本政府からの強制措置ではない。あくまでも希望する日本人に対して日本政府が「自国民の保護」を目的にチャーター機を、ANAや中国政府と調整して運航している。武漢からの移動が禁止になる直前に自己負担で日本へ帰国した日本人も多くいるという現状を考慮しても、運賃相当分を一律に負担してもらうことは、過去のケースと同様で不思議ではない。

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