「絵」が家に届く定額レンタルが注目される理由

アート後進国の「日本」ははたして変わるのか

藤本さんによると、日本におけるアートの販売市場規模は3300億円。その7割は画廊や百貨店向けの売り上げであり、一般人が購入するハードルは高い。アート初心者は自宅に絵画を飾りたいと思ったとしても、原画を手にする機会は限られていた。

「インテリアとしてのアートの文脈を育てなければ、資産価値としてのアートの文脈も十分に育ちません」と藤本さん。アートのマーケットの規模が小さいということは、日本のアーティストが創作を続けながら生計を立てるのが難しいということを意味する。

Casieに作品を預けているアーティスト「Moeistic Art」さん(写真提供/Casie)

「日本のアーティストを取り巻く状況を変えるためには、アートを飾ったり、購入したりする人を増やす必要があるんです」

アーティストを思ってCasieを運営する藤本さんは、芸術家ではない。起業する前は会社員をしていたそうだが、どのような思いからこの事業を立ち上げたのだろうか?

絵画サブスクはアーティストを救うか?

「僕の父が生前、絵を描く仕事をしていました。自分の描きたい絵だけを描いて生計を立てていくことは当時も難しく、商業用の絵を描いたりしていました。才能あるアーティストは創作活動に全エネルギーを投下するので、作品発表や販売に向けたエネルギーを残しておくことができません」

日本の芸術家人口は約50万人(2010年国勢調査を元にCasieが算出)。そのうち芸術家の仕事だけで生活できているのはわずか15.6%(2000年 文化庁「我が国の芸術文化の動向に関する調査」より)。才能や意欲があっても作品が売れず、生計が立てられないために創作を断念する人は後を絶たない。

そんな中、Casieが現在契約しているアーティストは約300人(2019年1月時点)。そのうち9割以上が日本で活動するアーティストだ。レンタル料金の35%、売れた場合は販売価格の60%が彼ら・彼女らに還元される。

さらに利用者のもとにはアートだけではなく、作家について詳しく記載されたプロフィール資料などが一緒に届けられる。

絵画と一緒に利用者に送られる同梱物(写真提供/Casie)

単にアートを鑑賞するだけではなく、描かれた背景を知ることで、利用者が作家を好きになる仕組みだ。

1人ひとりが自分の家や部屋にアートを飾ることが、日本にアート文化を定着させる第一歩。その先に、芸術家が才能を発揮できる社会が待っているのかもしれない。

(取材・文/一本麻衣)

●取材協力
Casie (Instagram)
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