本章では、いよいよ読解に進む。これまで身につけたテクニックのいくつかを応用して読み取りをしていくことに主眼を置く。読み取るための主たるポイントをいくつか挙げる。
抽象的なことを書いたら、その後にその説明をする。逆に、具体的に書いたら、それを抽象的にまとめる。
このように、文章は抽象と具体からなっている。ところが、読解の苦手な人はその区別がすぐに頭に入らない。問われれば答えられる場合が多いが、それがすらすらと理解できない。したがって、まずは意識的に抽象と具体を解きほぐしてみる。すらすらと頭に入ればよいが、そうでなかったら、抽象と具体を意識しながら読んでみる。
「型」を意識して読む
第三章で、私は「確かに……。しかし……」という書き方を推奨した。このような書き方をするのは、自分の論理を客観的にするために、あえて反対意見を考慮して譲歩するというテクニックだった。この表現を身につけることによって、論を深めることもでき、相手に譲歩する形をとることもでき、ある程度の字数が必要な場合にはうまく字数配分ができるという利点がある。
ところが、実はこの表現は読解においても重要な意味をなす。読解の苦手な人は、この「確かに……。しかし……」の仕組みを十分に理解できていないのだ。
多くの文章が、「確かに……。しかし……」のパターンを使っている。複雑な文章になると、1ページの紙面でこのパターンのオンパレードになる。「このように語る人がいるが、それはおかしい。また、このような意見があるが、それも問題だ。そのためこのような問題が出てくるが、それは間違っている」といったように文章が展開される。読解の苦手な人はそれについていけない。
文章を読んで、まず構成を論理的に解きほぐし、どのような構成で書かれているかを探る必要がある。その場合、小論文の基本である「四部構成」を考えて読むとよい。
論文ふうのものはほぼ100パーセント、それ以外でもかなりのものが「問題提起」「意見提示」「展開」「結論」という四部構成になっていると考えてよい。
たとえば、新聞の社説なども多くの場合、政治的な動きが説明され、そのような行動が好ましいかどうかを問題提起する。それから、「確かに、この行動にはこのような意図があるのだろう。しかし、それには問題点もある」と続けて、その内容を吟味する。そして、最後の結論を示して、今後の方向性を提示して終わるだろう。
学術論文も同じような形をとっている。最初に研究課題を示し、その後、先行論文についての検証をする。この部分は大まかには、「確かに、先行論文はこの点で功績があった。しかし、不足があった」などとまとめられるだろう。そして、次に自説の検証に入って、最後の結論を示す。
このように、多くの文章がこの「型」を用いている。それを意識して読むわけだ。