アメリカの株価は大きく調整する可能性がある 長期は上昇でも目先は期待を織り込みすぎだ

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「米中合意」は「タヌキとキツネの合意」のようなものかもしれない。果たして、今後も株価は上昇と読んでもいいのだろうか(写真:ロイター/アフロ)

最近の日経平均株価は、2万4000円の節目こそ割っているものの、高値圏で推移している。またアメリカの主要な株価指数は史上最高値を小幅ながら更新し続けるなど、主要国の株価は総じて堅調な推移をたどっている。

米中合意は「タヌキとキツネの合意」のようなもの

だが、筆者はこうした推移のために、今後の株価下落リスクが積み上がってきていると懸念している。秋以降は、米中部分合意が進展するとの期待が、大きな株価押し上げ要因であったと解釈できる。先週末(20日金曜日)も、ドナルド・トランプ大統領が習近平主席と電話協議し、習主席が「両国と世界の繁栄にプラスだ」と米中合意を歓迎する旨を表明したと報じられたことが、株高材料とされた。

「米中部分合意」というまったく同じ材料を、何度も出がらしのように買いの口実として使い続けること自体に危うさを感じざるを得ないが、この合意自体が果たして確かなものだろうか。部分合意の肝は、「中国がアメリカ産農産品を大量に購入するので、アメリカは一部関税を引き下げる」という点にあるが、その最も核となる点について、米中両国で齟齬がみられる。たとえば農産品の購入額については、アメリカ側は「2年後までに、年間400~500億ドル購入することを、中国が約束した」と表明している。しかし先日の記者会見でも、中国は具体的な購入金額について、質問されても、具体的に答えていない。

むしろ中国側からは、「アメリカ産農産品輸入額の年間最高記録は、2017年の240億ドル程度であるのに、その2倍近くも買えるはずがない」との声が聞こえてくる。

だからと言って、2020年1月と見込まれる詳細の「詰め」の際に、今回の部分合意が決裂する可能性は低いだろう。おそらく両国とも、「2年後に400~500億ドルも買えるはずがない」という事態は十分承知の上で、それはまたその時に議論すればよいと、先送りを腹に秘めながら合意のふりに至ると考える。いわば「タヌキとキツネの合意」とも言えるだろう。

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