あおり運転にはこの無料ドラレコアプリが効く AIがナンバーや人、車間距離まで判断する

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スマートくんは、事前登録やログイン不要で、誰でも無料で使い始めることができる。個人情報をいっさい収集しない理由は「自治体などと連携することで、道路情報のビックデータの活用を考えている」(周COO)。一般ユーザーだけでなく、タクシー会社や運送会社など社用車にもアプリを導入してもらうことで、幅広い道路情報を収集する狙いがある。

すでに複数の自治体が導入に意欲を示している。これまでは、道路に倒木や落石などの障害物がある場合、職員が地域をパトロールしたり、市民が通報をしたりといった情報収集に限られていた。

しかし、AI搭載のカメラが道路の障害物を検知すれば、リアルタイムで情報を把握できるようになる。道路の白線の欠落や路肩の破損などの情報は、インフラのメンテナンスにも生かせる。許諾が取れたら、徘徊する老人など、沿道情報を幅広く収集することも可能になるという。

走行記録はスマホ内のメモリーにアルバムとして蓄積されていく(写真:ニューラルポケット)

AIが取得できるデータは膨大だ。速度や車間距離にとどまらず、前方車のナンバープレートや道幅、落下物、白線の欠落、沿道のガソリン価格、空き地情報など無数の情報を検知できる。今のところは「個人データに抵触しないよう、公益性の高い道路情報を得ることにフォーカスしている」(周COO)。

基本的にはアプリを導入した法人や自治体のデータ取得が優先されるものの、一般ユーザーの場合も許可を得たうえでテキストデータに変換し、開発元に転送される仕組みで準備を進めているという。

AI研究の権威=松尾豊教授も関わる

開発元のニューラルポケットは同年12月4日、ソフトバンクとトヨタ自動車による共同出資会社MONET Technologiesが設立した、MONETコンソーシアムに加盟しており、自動運転での活用も視野に入れている。

同社は2018年設立のベンチャーで、AI技術を用いたファッショントレンド解析サービスからスタートした。開発中のデジタルサイネージ広告では、広告の前で立ち止まった人の服装や世代、性別をAIが分別して、最適な広告を配信することができる。

現在の社員数は50人弱。大手電機メーカー出身者のほか、外国籍社員が4割を占める。重松路威社長はマッキンゼー・アンド・カンパニー出身、佐々木雄一CTO(最高技術責任者)はスイスの欧州原子核研究機構(CERN)出身など、華々しいキャリアを持つ。顧問は、AIでディープラーニング(深層学習)研究の第一人者、東京大学の松尾豊教授が務めている。

新規事業として立ち上げたドラレコアプリの開発期間はわずか3カ月半。8月に社員が駐車中に車をぶつけられ、ドラレコを搭載していなかったことを後悔したことがきっかけだった。ちょうど社内では、端末内でAIを動かす「エッジAI」のプロジェクトを模索している最中だったこともあり、ドラレコアプリ開発が現実化した。

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