余計なモノを持たない主義が宗教的に見える訳 ミニマリズムが提供する魅力的な価値のモデル

拡大
縮小
ミニマリズム、断捨離は「ときめく」かどうかが重要になる(写真:Fast&Slow/PIXTA)

必要最小限の持ち物で、シンプルな生活を送ることで知られているミニマリスト。今や「デジタル・ミニマリズム」=物理的な断捨離ではなく情報的な断捨離(!)が登場するなど、ミニマリズムはスマートフォンに代表されるデジタルライフ全般にまで及び始めている。

その一方で、ミニマリストやミニマリズムに対する批判も相変わらず根強い。「気持ち悪い」や「宗教くさい」等々、修道僧のような禁欲的なイメージが先行しているからか、「あっちに行っちゃった人」といった文脈で揶揄(やゆ)されることも多い。確かに、「行きすぎた断捨離」や「病的なこだわり」に至っている例が少なくないのも事実だ。しかし、最も大きな論点は、それが恐らく「自己啓発」として機能していることだろう。

「モノを持たない生活」が「人生を変える」

「世界中の人たちと実際に会い、ものを持たない生活の利点を話し合った経験から、私は自信をもって断言できる。ミニマリスト生活は、すべての人の人生を変える」(『より少ない生き方 ものを手放して豊かになる』桜田直美訳、かんき出版)

これは、現代のミニマリズム運動を代表する講演家であるジョシュア・ベッカー氏の言葉だ。

一般的に、自分自身の能力を向上させることや、精神的な成長を目指すことは「自己啓発」と定義されるが、「モノを持たない生活」が「人生を変える」というロジックの構築の仕方を見る限りは、いわゆる「お片付け」を「福を呼び、幸運を招く」メソッドとして位置付ける「断捨離系の自己啓発」の一種といえる。

ベッカー氏は、「モノがない場所が増えれば、それだけ新しい可能性が生まれてくる」「いらないモノを一掃すれば、理想の人生を妨害している障害物もなくなるのだ」(前掲書)と当然のように主張する。つまり、「いらないモノを片付けてしまえば、理想の人生が送れるよ」と言っているのだ。世界的に有名な片付けコンサルタントの「こんまり」こと近藤麻理恵氏が提唱する「こんまりメソッド」でも、「片づけをすることで、人生を変える」がモットーになっている。近藤氏は「残すモノを『ときめくかどうか』の基準で選ぶこと」を重視する。

次ページこんまりも人生の変革を語っている
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT