読解力が弱い人は文章もちゃんと書けていない
複雑な現実世界を理解するために必要な能力

読書量の減っている昨今、読解力をつけるのに効率的な方法とは?(写真:Fast&Slow/PIXTA)
79か国・地域の15歳約60万人を対象とした国際学習到達度調査(PISA)の結果が12月3日に公表され、日本は「読解力」が前回の8位から過去最低の15位に急落したことがわかりました。
“小論文の神様”樋口裕一さんの新刊『「頭がいい」の正体は読解力』(幻冬舎新書)は、まるでその結果を予見していたかのように、「第一章 なぜ日本人の読解力が落ちているのか」で始まります。さらに樋口さんは、「文章を読むだけでは読解力はつかない」とも指摘。一体いま何が起きているのか? そして、効率的に読解力を鍛えるにはどうすればいいのでしょうか?
原因は読書量の決定的な不足
なぜ、読解力が落ちているか。
言うまでもないことだが、読書量の決定的な不足がその原因だろう。
スマホが普及する前は、あれこれ言われながらも、日本人はそれなりには本を読んでいた。少なくとも新聞を読み、雑誌を読んでいた。低俗な雑誌や新聞も多かったが、ともあれまとまった文章を読んでいた。大ベストセラーになる書籍もしばしば現れた。読書が趣味という人は大勢いた。小説が多くの人の話題になっていた。
だが、今ではそのようなまとまった文章を読む人は少ない。新聞は発行部数を大幅に減らし、雑誌の多くが廃刊に追い込まれている。電車の中でも、新聞や文庫本などを読んでいる人を見かけることはほとんどない。乗客のほぼ全員がスマホをのぞき込んでいるというのは、今はごく日常的な電車内の光景だ。
ネット内を駆け巡る文章は、短文がほとんどだ。複雑な状況を語ったり、深い思念を語ったりする文章はネット内にはみあたらない。一目で理解できるような文章だけが幅を利かせている。
これでは読解力が養成されるはずがない。多くの若者が学校の教科書と試験くらいでしか文章を読まない。文章を読む習慣を持っていない。
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