会話を「スマホに頼りすぎる人」の危うい思考

同調できているようで実は成立していない

一見、同調しあっているようでいて、実は一切コミュニケーションが成立していないやりとり。これってどうなんだろう。どんどん人間を簡略化している気がする。

スマホの写真機能は使えても“体”験できない

言葉を使って相手に語る機会が減ってしまうと、今度は、自分の体験や感情を、自分でこまやかに認識するということ自体ができなくなっていくのではないかと思う。

東京駅の赤レンガ駅舎を見下ろせるビルのテラスで景色を眺めていたときのことだ。20代前半ぐらいの若い女性2人組が、スマホを片手に「ここヤバーい!」と言いながらテラスに出てきた。

まずは駅舎を写真に撮り、そして、撮れた写真をおのおのがスマホをつついて調整。出来上がった画像をお互いに見せ合った後……帰って行った。肉眼でじっくり駅舎の様子を眺めたりはしないのだ。彼女たちに駅舎を見た感想を聞いても、なにも答えられないと思う。

インスタ映えするかどうかのほうが重要な時代だし、そんなものなのかもしれないが、実際、特に若者には、自分の体験を説明できない傾向が出ているらしい。

知人の元大学講師によれば、スマホを使って自分の見てきたものを人にも見せようとする学生に、「それできみはこれをどう思ったの?」と説明を求めても、言葉に詰まってしまい、自分自身が体験したことなのに、戸惑ったような表情を見せるケースがあるという。

そのうち、海外旅行の写真を人に見せておいて、「これはどこの国?」と聞かれたら答えられない、なんていう人も現れるかもしれない。

臨床心理学の研究では、このような若者の語りの乏しさには、脳の前頭葉の機能低下が相関しているのではないかという見方もあるようだ。だとしたら、感性だけでなく、すでに肉体が老化、いや退化していることになってしまう。

あまりにたくさんの情報があふれるネット生活、その一部には、言葉で語らずやり取りする手段はあってもいいと思う。でも、そればかりが主流になっていくと、どんどん人間は反射的な動物になって、機能そのものが衰えてしまうのではないか。

面倒に思っても、できるだけ言葉で語る意識を保っていたいところだ。リアル世界での“SNSしぐさ”に、ご注意を。

参考文献/鍋田恭孝『子どものまま中年化する若者たち』(幻冬舎新書)
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